このたびマサがまぐれで結婚することになり、11月12日に市谷のホテル大蔵で式を挙げる運びとなりました。
ということで何かお祝いをしなければならないことになり、急遽FTBはユタに特派員を派遣し、マサがシャブシャブ屋等で悪さをしないようにナバホの祈祷師に呪文をかけてもらいに行って来た。
11月3日(金)
UA852便でサンフラン経由ラスベガスに到着したFTBは早速マッカラン空港でおびただしい数のスロットマシンの歓迎を受けた。マサであれば持参した大量の500円玉を一気に空港のスロットマシンにつぎ込み、「大ピンチ!!」になった挙句ブラジルのジーコに電話してレイクエンジェルを呼んでもらったが、レイクの人文字の「イ」が出来ずに結局強制送還という憂き目にあっていただろうが良識のある私はそろっとスロットマシンエリアをスルーしてラスベガス市内に向かった。今日は到着した時間が遅かったので、とりあえずユタへの突入を何とか果たしCedar CityのMOTEL6($29.-)にとっとと引き払った。
11月4日(土)
朝起きて見ると車がカチンコチンに凍っていた。電子レンジを使わずに何とか解凍出来たので早速アーチズナショナルパークへの道を急いだ。ユタ州を縦断するI-15を走っているとあたりは一面銀世界であり、この地の冬の訪れのはやさを思い知らされた。
アーチズに到着したのは午前11時を少し回った時間だった。ゲートで入場料($10.-)を支払った後、ビジターセンターでスタンプを押し、最初のビューポイントであるパークアベニューへ向かった。パークアベニューと言えばニューヨークのマンハッタンの高層ビル街が連想されるが、アーチズのパークアベニューは両サイドを摩天楼のような高い岩山にはさまれたマサに自然界に君臨する高層ビル街であった。垂直の岩に何か生物が張り付いており、よく見ると若者が数人ロッククライミングでいい汗をかいていた。
マサよ、君はバランスロックという岩を知っているか?バランスロックとはひとつの巨大な岩の上にもうひとつの岩が今にも崩落しそうであるが、絶妙のバランスで乗っかっている岩のことである。しかしこの岩も大蔵省の地盤と同じく少し振動が与えられでもすれば即崩壊しそうな危うさをただよわせていた。
その後、主要ビューポイントであるNorth Window, South Window, Double Arch等を見物した後、アーチズの1500ものアーチの中でマサに真打と呼ぶにふさわしいデリケートアーチを見に行った。デリケートアーチはアーチズナショナルパークのみならず、ユタ州のシンボル的存在として君臨しており、その光景はユタ州の車のナンバープレートの図柄に採用されているほどである。
デリケートアーチに行くにはWalfe Ranchの駐車場で車を止め、片道2.4kmの山道を登らなければならなかった。道のりは砂道から途中で一枚岩の急な登りになり、岩の上にマイルストーンが置かれて道しるべとされていた。流れる汗を拭いもせず30分程歩いた後、やっとのことでデリケートアーチを拝むことが出来た。アーチは幅10m、高さ14m程で、エレガントなアーチ状の形状をしており、靖国神社に持っていけば立派に鳥居としての役割を果たしそうな荘厳さをたたえていた。私もマサが幸せな新婚生活を送れ、またその後、長銀や日債銀のようなすばらしい天下り先が見つかるようにと拍手を打っておいた。また通常私が提供している1万円の賽銭を入れようと思ったが賽銭箱が設置されていなかったので残念ながら断念した。
デリケートアーチは日没1時間前が見頃とされており、アーチ本体やその周辺を飾る岩々が夕日を浴びて時間とともに黄金色から赤色に変色して行く様はこの世のものとは思えない自然のスペクタクルであった。日没の景色を見終えると観光客は足早に帰路を急いでいた。なぜなら辺りは急激に暗くなり、帰り道がわからなくなるからだ。
11月5日(日)
今日は朝8時からアーチズの奥地のデビルスガーデンを起点としているトレイルからスタートした。片道3.2kmのトレイルにはトンネルアーチ、ナバホアーチ、パイントゥリーアーチ、ダブル・オー・アーチ等たくさんのアーチがあったのだが、やはり最大の見所は世界一長い(89m)といわれているランドスケープアーチであった。このトレイルは途中から道なき道を進むことになり、岩の上のがけっぷちに沿って登る道があったりと非常にスリル満載だった。岩の上から景色を一望するとそこはまるで原始時代のように感じられ、今にもギャートルズやドテチン、ヒネモグラ、マンモー、ガイコツ等が出て来そうな雰囲気だった。
アーチズを後にしたFTBは近隣に位置するキャニオンランズナショナルパークにも足を伸ばした。ここは一説によればグランドキャニオンを凌ぐ眺望であると言われており、実際にグランドビューポイントに行って景色を見てみたが確かに峡谷の幅は大手のグランドキャニオンよりも広かったが、谷底の深みや微妙な色合いに関してはやはりグランドキャニオンには及ばないと思った。
キャニオンランズにはモニュメントバレーを彷彿とさせるメサやビュートがたくさんあった。コロラド川に削られて出来たグランドキャニオンのような巨大な峡谷が数億年の年月をかけて侵食され、メサやビュートとしてその名残を残し、いつかは消えていくという歴史の流れをたどるのであるが、ここはマサに地球規模の歴史物語が日夜展開されている恐るべき観光地であった。
夕焼けの眩しいキャニオンランズを後にし、FTBは西に進路を取り、一路ザイオンナショナルパークへの道を目指した。結局ザイオンの園内に辿り着いたのは、夜10時を回った時間であり、道路のわき道を地元の鹿が活発に活動しているのが確認された。深夜に侵入したザイオンは一種異様な雰囲気を漂わせており、昼間見ればその大きさに圧倒されるであろう巨大な岩が不気味な程の静寂の中でどっしりと横たわっている気配を感じさせていた。
11月6日(月)
2年前にグランドキャニオンノースリムを訪れた際、その道すがらザイオン内部を通ったことがあり、その時に圧倒されるような景観を見て「ウォー!何じゃこりゃ~!」と叫んだ経験があり、ここには必ず戻って来て再度内部を探索しなければならないと考えていたが今日やっとのことで現実のものとすることが出来た。
昨夜はザイオンの隣町のスプリングスデールのモーテル($37.91)に滞在していたため、今日は朝9時前には園内に入ることが出来た。入場料が2年前の車一台あたり$10から$20に値上げされており、ここもついに大手の仲間入りをしたのかと感慨深いものがあった。しかしながら、値上げした代わりにビジターセンターは近代的に改装されており、また激増する観光客を裁くためにシャトルバスが運行されていた。
ザイオン観光でメインとなるのはビジネスセンターにほど近いザイオンキャニオンである。ここからの景観は滝はないものの総じてヨセミテバレーの谷底に非常に似かよっており、この地域からたくさんのトレイルが伸びている。本日まず最初にトライしたのはザイオンでもっとも過酷と言われているエンジェルスランディングだった。グロットというポイントで車を止めてトレイルを歩き始めたのだが、途中から坂が非常に急になり、つづら折状に登っている山道は容赦なく観光客の体力を奪っていく。しかしこの程度はまだ序の口で3.5kmまで登りきった地点からさらに先まで到着するためには岩に打ち付けてある支柱と鎖を頼りにロッククライミングばりの要領で残り800mを進行しなければならなかった。両サイドはマサに崖で落ちたら確実に命が無いことを覚悟しつつも命からがらゴールに辿り着くことが出来た。
頂上からの光景はマサに天使が舞い降りるところにふさわしい絶景であった。眼下にはザイオンキャニオンの全景を見晴らし、正面にはザイオンの顔であるグレートホワイトスローンを間近に拝むことが出来た。ところでこのグレートホワイトスローンは麓のバージン川からの高さ732mを誇る世界最大級のモノリス(一枚岩)でオーストラリアのエアーズロックの2倍、池袋のサンシャインビルの3倍の高さを誇っている。ちなみにエンジェルスランディングの麓からの標高差は450mでマサをバンジージャンプさせようにも途中でゴムが切れそうなくらいの高さであった。
頂上に30分くらい滞在して天使の気分を十分堪能した後、来た道を引き返すことにしたのだが、岩を飛び飛び下っているとひざからしたがおもしろくもないのにゲラゲラ笑い始めた。特にフラミンゴといわれた現役時代の王監督のように一本足の状態になるとガクガク状態が顕著であり、このトレイルの過酷さをあらためて思い知らされた。下から登ってくる善良な観光客も今にも死にそうな目つきながら必死に作り笑いを浮かべて挨拶をしてくるのだが、彼らはこの後本当の地獄が待っていることをこの時点では気づいていないようだった。
エンジェルスランディングを制覇した後、FTBが向かったのはザイオン観光のハイライトとして名高いナローズというところである。ナローズというとトミーズやドロンズのようにお笑い芸人を連想するかもしれないが面白さのレベルはナローズのほうが全然上だという話である。両サイドを巨大な崖にはさまれたバージン川を遡って行くと崖と崖の間の距離が次第に狭まって行き、最後には幅6m程度の広さを高さ300mの崖に挟まれてしまうという閉所恐怖症の人には最適な環境を提供する僻地だということだ。ここのトレイルは途中で行き止まりになり、その先は川の中をじゃぶじゃぶと進行しなければならない。季節柄水温が低かったので川への侵入は断念せざるを得なかったが、夏季にはたくさんの観光客が川の中を進んで行くという。しかし、川幅が狭いため、雨量が少しでも多くなると水位が極端に増し、非常に危険な状態になるとのことで2年前には2名の犠牲者を出したと言う話である。
ナローズの入り口の景色を堪能したあと、車に乗り込み、マウント・カーメル・ハイウエイを走り、ザイオンの岩肌が織り成す美しい景色を十分に堪能することが出来た。園内のアスファルトはすべて赤茶色に着色されており、周囲の景色と非常にマッチしているのが印象的だった。
11月7日(火)~11月11日(土)
11月7日~11月10日の午前中までラスベガスのフラミンゴヒルトンで私が率いているアクセント・テクノロジーズの会議が行われたのでその期間はおとなしく会議に参加しておいた。しかし、会議の終了した夕方からラスベガス歴訪4回の実績を誇る私のところにツアーの依頼が殺到したため、仕方なく人々に町を案内してやった。新宿の歌舞伎町のボッタクリのお兄さんが町の詳細を知り尽くしているのと同じくらいラスベガスの内部に詳しい私が案内した見所はBellagioの噴水ショー、ミラージュの火山活動、トレジャーアイランドの海賊船沈没ショー等のホテルの目玉のアトラクションからFremont Experienceの動くアーケードのパフォーマンス、ストラトフィアタワーの展望台と非常に多岐に渡った。また、ハードロックホテルではたくさんの有名人のギターを目の当たりにしたのだが、残念ながらジ・アルフィーの高見沢俊彦や高中正義等の日本を代表するギタリストのギターは目にすることが出来なかった。
マサよ、君はハーレーダビッドソンカフェに行ったことがあるか??
私は・・・行った。
ストリップの目抜き通りで巨大なハーレーが壁から飛び出ているのを目撃した観光客も多いと思うがそこが全米のハーレー愛好家がたむろするハーレーダビッドソンカフェである。中にはハーレーの1号機や様様なタイプのハーレーが所狭しと展示されており、またベルトコンベヤー状の鎖にぶら下ったハーレーが店内を何台も回っているさまはマサに世界一のハーレー見本市だと思われた。
会議の最終日は午前中で散会となったので午後はフーバーダムツアーと洒落込んだ。ラスベガスから30分ほど車を飛ばすとすぐにフーバーダムに着いたのだが、今回参加したフーバーダムレギュラーツアー($8)の案内のおっさんによるとフーバーダムの位置するボルダー市はネバダ州で唯一ギャンブルが禁止されているという。理由はフーバーダム建設中にこの地に出稼ぎに来ていた労働者に日銭をギャンブルで使い果たして丸裸にならないようにとのフーバー大統領の粋な計らいであったとか・・・
結局ラスベガスには4日間もの長期滞在をさせられてしまったわけだが、マサであれば毎日カジノで大金を使い果たし結婚資金も底を尽くという悲惨な結果に終わっていたであろうと思われた。