グッダイ! マサよ!!
ということで、台風一過がもたらした猛暑のため意識が朦朧となっている勤労者が盆休み前のラストスパートの残業をこなしている頃、この台風が昨今の地球温暖化により加速されている現状を肌で感じ取っている私は、とりあえずこのモ~モ~とした暑さから抜け出すべく赤道を越えて北半球とは反対の季節感を堪能すべく、3回目のオーストラリア大陸への上陸を試みることにした。
8月11日(金)
ロンドンヒースロー空港での航空機爆破のテロ未遂事件が大々的に報道されているにもかかわらず成田空港第一ターミナル南ウイングの手荷物検査場は以外に少ない旅行客のせいもあってか通常通り無愛想に淡々と業務がこなされていた。
午後7時10分発予定のシンガポール航空SQ11便シンガポール行きは手荷物検査が厳しかったであろうロサンゼルスから到着する機材の遅れにより定刻より20分程度遅れて出発したものの、深夜の1時にシンガポールチャンギ国際空港に滞りなく到着することが出来た。
8月12日(土)
シンガポールに入国することなく、一夜を明かすことが出来るファシリティである空港ターミナル内のTransit Hotelを午前7時半にチェックアウトし、そのまま午前9時35分発のSQ223便でオーストラリア西海岸の最大都市であるパースを目指した。パースはオーストラリア全土の約3分の1を占める広大な西オーストラリア州の州都であり、世界で最も住みやすい都市としての地位を確立しているのだ。
定刻午後2時45分頃パース国際空港に到着すると空港バス(A$15)に乗りパースの都心部に侵入し、予約しておいたホテルイビスにそそくさとチェックインすると早速パース市内の散策に乗り出すことにした。パースの中心をぶち抜くように流れているスワン川のほとりには見たこともないような広さの芝生の広場が広がり川べりにはジョギングで汗を流すランナーやサイクリングロードを駆け抜けるチャリンコ野郎やローラーブレーダーが気温20℃以下のさわやかな気候に身を委ねていた。
高層ビルの林立する都心部に足を運んでみるとバーの軒先でビールを飲みながら週末のトワイライトを楽しんでいる陽気なオージーの面々に遭遇し、ふと地球に迫っている環境問題をカンガェル~ことを忘れさせてくれるのんきな雰囲気を漂わせている。また、街中には日本語の案内や看板も見られ、通常の日本食屋どころか回転寿司さえ君臨し、しかも客の回転も良さそうな様子が見て取れた。
8月13日(日)
早朝より雨のそぼ降る中、ダウンタウンのエイビスレンタカーで5速マニュアルのトヨタカローラをレンタルするとパースの約250km北にあるナンバン国立公園を目指した。一気に都心部を抜けると道は片側一車線対面交通でありながら110kmのスピードが出せる1号線へと移り変わった。カンガルーやワラビー等の野生動物の棲んでいるブッシュを駆け抜けていると路肩には車にはねられたカンガルーの遺体が痛々しく転がっている光景が目に飛び込んでくる。不幸にも事故死してしまったカンガルーのはかない人生をカンガェル~暇もなく、西オーストラリアを代表する景勝地であるザ・ピナクルスへ到着した。
日本のCMやドラマの撮影で有名になった「石化した原生林」ザ・ピナクルス(A$10)は太古の昔、海辺だった一角に貝が堆積し石灰岩質の土台を作り上げた。そこに深く根を張った原生林が枯れた後、大地が風化されていき、根の間に残った石灰岩層が塔のように残って出来た奇景である。「荒野の墓標」という異名がぴったりなほどあちこちに人間の背丈ほどもある化石が林立する様はマサにこの世の終わりを感じさせる諸行無常系の観光ポイントである。
マサよ、君は35億年前から存在している世界最古の生物の存在を知っているか!?
ということで、ナンバン国立公園の塩湖にストロマトライトという先カンブリア代にすでに地球上に棲息していたといわれる生物の観察を実行することにした。ストロマトライトとは藍藻類という繊維状の微生物の間に海水中の石灰砂や細かな沈殿物が入り込んだり、堆積したりしながら成長したものであるが一見すると何の変哲もない岩にしか見えないので塩湖の近くには説明用の看板が欠かせないのである。
マサよ、君はオーストラリアくんだりまでのこのこやって来てツチノコに遭遇したことがあるか!?
というわけで、ナンバン国立公園内の黄砂の大地で車を転がしていると太い胴体をノコノコと揺らしながら道路を横切っていくツチノコ系の爬虫類をあやうく轢き殺しそうになり動揺してしまった。車から降りてその生物をマジマジと観察させていただくと外見はツチノコ状であるものの胴体には短い足がインストールされており、また、接近して脅かすと口を開けて反撃をするポーズを取るほどの闘争心を持ちながら逃げ足が遅いという生態が観察された。その生物はbobtail skinkというトカゲの一種でこの地に広く分布していることがナンバン国立公園のパンフレットで確認されたのだ!
8月14日(月)
パースの東100kmほどのところにヨークという英国風田園風景を演出する魅力的な小さな町があったのでよ~く観察するために古い建物が数多く残るダウンタウンに侵入し、ヨーク自動車博物館(A$8)を見学した。ここにはビンテージからレーシングカーまで数多くの珍しい車が展示されており、日本が誇るポンコツ豆ぐるまであるスバル360やホンダS800の勇士も見られたのだ。
ザ・ピナクルスと並ぶ西オーストラリアの自然が造り出したオブジェであるウエーブ・ロックを見物するためにヨークから赤茶けた大地の上をさらに4時間程度カローラを転がすことと相成った。ウエーブ・ロックを要するマイルドなリゾート地の様相を呈したキャンプサイトに午後2時過ぎに到着すると先着の中国人観光客グループの後を追う形でウエーブ・ロックの見物に向かった。稲村ジェーンを髣髴とさせる高さ15mもの巨大な波があたかも一瞬にして固まってしまったかのように見えるこの奇岩は花崗岩から出来ており、長年の侵食によって波のような模様が形成されたのであるが、観光客はお決まりの波乗りのポーズで不安定な足場の上で記念写真を撮っていた。また、ウエーブロックの上に登るとそこは岩場状の大きな広場が形成されており、ごろごろと転がっている丸い岩をはじめ広大な景色を見渡して壮大な気分を満喫することが出来るのだった。
ウエーブロックを後にしてパースへの帰路を急いでいるとあたりは既に暗くなっていた。いたるところにカンガルーマークの動物飛び出し注意の看板が掲げられているのだが、案の定路肩のブッシュからワラビーがビヨンビヨンと飛び出してきやがり、あやうく轢きそうになるところだった。ところでカンガルーのような有袋類を車ではねた時の対処法であるが、犯人は決してひき逃げをすることなく、まずは有袋類の袋の中を調べなければならない。これは金品や優待券のような貴重品を奪うのではなく袋の中に子供が入っていればすみやかに当局に通報してレスキューを要請する義務をまっとうするための当然の行為なのである。
8月15日(火)
早朝より降りしきる冬の雨の中、パースから1時間ほど海沿いを南下してマンジュラというリゾート地に到着した。ここにはマンジュラ河口というイルカたちが生息している内海があり、夏場にはドルフィンスイミングが可能で誰でも気軽に元祖♪イルカに乗った少年♪である城みちるの気分を味わうことが出来るのであるが、今日は風も強く天候の移り変わりが激しかったため、おびただしい量のポテトが付属しているフィッシュアンドチップスを食して退散するしかなかった。
パースに戻る道すがらスワン川がインド洋に注ぐその河口に存在する古風な町であるフリーマントルに立ち寄った。残念ながら開館時間の都合でフリーマントルの見所である、昔アボリジニを拉致していた旧フリーマントル刑務所や博物館に侵入することが出来なかったので海沿いの灯台の下でポテトを投げてカモメに餌付けをしてお茶を濁すしかなかった。
日もとっぷり暮れてしまったのでパース随一の夜景スポットであるキングス・パークの展望地、州議事堂の噴水前からきらめく高層ビル群のライトアップを眺めてロマンチックな雰囲気に浸った後、夜の繁華街ノースブリッジで最後の晩餐をこなした後、パース国際空港に帰って行った。
8月16日(水)
シンガポール航空が間借りしているカンタス航空のラウンジでビールとワインで酔いをまわした後、午前1時5分発のSQ216便でシンガポールまでひとっ飛びし、さらに9時45分発SQ12便東京行きに乗り換えて夕方6時前には成田に到着し、そのまま流れ解散となる。
FTBサマリー
総飛行機代 \185,006
総宿泊費 S$57.75, A$281.85(A$1 = \90)
総空港バス代 A$15
総レンタカー代 A$321.99
総ガソリン代 A$178.57
総走行距離 1,875km
総目撃した車にはねられたカンガルー数 5頭