マサよ、君は世界三大瀑布というものを知っているか?
またそれらをすべて制覇した実績を誇りに刻んだことがあるか!?
ということで、日本三大幕府と言えば鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府にすぎないのであるが、世界三大瀑布とは北米のナイアガラの滝、南米のイグアスの滝、アフリカのヴィクトリアの滝を指し、いずれ劣らぬ大規模なマイナスイオン供給源となっているので源頼朝もその存在に気づいていれば心の拠り所にしていたはずである。
次の総選挙で自民党の大敗が予想され、与党を支えてきた官僚も滝に打たれて初心に戻ることが必要とされる中、FTBは先行してヴィクトリアの滝の猛しぶきの洗礼を受けにはるばるアフリカ南部に足を伸ばすことになったのだ。
2009年7月16日(木)
午後7時発NH911便香港行きは定刻通り出発し、機内エンターテイメントにより提供される邦画「おっぱいバレー」に主演して胸がいっぱいになったはずの綾瀬はるかとともにはるか彼方で流れ落ちる大滝に思いを馳せていた。午後11時50分に南アフリカ航空SA287便ヨハネスブルグ行きに乗り継ぐと12時間以上もの時間を滝に打たれるのと同等の試練が与えられたように狭い機内で過ごしていた。
7月17日(金)
午前7時前におなじみのヨハネスブルグO.R.タンボ国際空港に到着すると2時間半後には再びSA040便VICTORIA FALLS行きのの機上の人となっていた。合計20時間以上のフライトを経て念願のジンバブエにあるVICTORIA FALLS国際空港に到着したのは午前11時15分であり、早速ホテルが送迎用に手配したDingani Toursのバンに乗り込み今回のツアーの宿泊地となっているその名もずばりTHE VICTORIA FALLS HOTELにしけこんだ。
創業1904年のTHE VICTORIA FALLS HOTELは伝統と格式のあるホテルでかつてはエリザベス女王をはじめ、英国王室からの来賓も多数滞在した実績を誇っているのだ。ホテルの内装は非常にクラシカルで数多くの動物の剥製胸像が壁にインストールされており、リビングには腰が痛い人にはたまらないフカフカのソファや王や女王の巨大な絵も宿泊客の目を引くのに一役買っている。
ホテルのガーデンからはヴィクトリア大橋が遠巻きに眺められ、その奥には轟音とともに滝から流れ落ちた水が水煙となって立ち昇っていた。ガーデンを抜けると滝への近道となっているのだが、ホテルの敷地を一歩出るとそこは国立公園の管理地域であり、いつ何時野生動物の襲撃を受けても不思議ではない環境なので自己責任で行動しなければならないのだ。目の前に転がっているおびただしい数の生の象の糞を避けながら歩いていると野生動物に遭遇する代わりに原住民が立ちふさがり、100兆ジンバブエドル札を5USドルに交換してほしいとしきりにまとわりついてきた。赤字国債の乱発で返済の目途が立っていない日本の借金をいち早く返済したいはずの財務官僚であれば100兆という単位に思わず目が眩むところであろうが、ジンバブエは急激なインフレが進んでおり、すでにジンバブエドルは通貨としての機能を失ってしまい、100兆が無価値になるという悲しい現実を思い知らされた。
数え切れないほどの「0」を見て丸くなってしまった目を修復するために、「GORGE VIEW BRIDGE VIEW LOOK OUT」というザンベジ川による侵食によって形成された蛇行した峡谷を眺めて目の保養に努めることにした。固い岩盤が削られて出来たこれらの峡谷はかつては滝であったと伝えられており、滝の位置は気の遠くなるような年月をかけて今も上流方向に移動し続けているのだ。
滝を管理するゲートに近づくにつれ、轟音が大きくなるとともに体がマイナスイオンを帯びてくる感覚を覚えた。ゲートで入場料$20を支払うと念願のヴィクトリアの滝ジンバブエサイドの探索をスタートさせた。ちなみにこの滝は1855年にイギリス人探検家デビッド・リビングストンによって発見されたのだが、その偉大なるまぐれの功績により滝の入り口近くにはリビングストンの銅像がリビングルームでくつろいでいるかのように気軽に立ちはだかっているのである。
滝の名前は当時のイギリス女王の名前を取り、ヴィクトリアの滝と許可無く命名されたのであるが、現地では「モシ・オア・トゥンヤ」と呼ばれ、その意味は「雷鳴のとどろく水煙」という直感的なものであり、なるほど、郷ひろみがお約束で♪君たち女の子♪と歌っても♪僕たち男の子♪と音程をはずしても追っかけギャルのように滝の底から♪ゴーゴー♪という爆音しか返ってこないのである。
公園内の遊歩道は非常に整備されており、滝はデビルズ・キャタラクト、メイン・フォールズ、ホースシュー・フォールズ、レインボー・キャタラクト、アームチェア・フォールズ、イースタン・キャタラクトの6つのパートに分かれており、それぞれのパートでレインコートを持参していない観光客は濡れねずみとなって這い回ることを余儀なくされるのだ。
たまたま公園内に迷い込んだイボイノシシが濡れイノシシになりながらも果敢に草を食っていたので、財務官僚の悪行の濡れ衣を着せるべく対決しようと思ったのだが、伝家の宝刀イボころりを持参していなかったので断念した。滝は国境のザンベジ川を越えてザンビアサイドまで続いており、母国は違えどイボ兄弟がその迫力を競うように流れ落ちているのだ。
激しい水しぶきは太陽光線によりいたるところで美しい虹を形成している。ヴィクトリアの滝では満月の前後3日間の夜に公園を開放し、月の明かりで虹がかかる絶景も楽しむことが出来るため、滝廉太郎でなくても「荒城の月」程度の楽曲は作曲出来るのではないかと思われた。
7月18日(土)
早朝7時前に水煙の彼方から立ち登る真っ赤な朝日を眺めながら朝食をいただいた後、ザンビアへ向かうべくホテル敷地外の国立公園けもの道もどきに繰り出すとすぐさま地元のPoliceがエスコートしに飛んできたので今朝は原住民にジンバブエドルをUSドルに両替してあげる機会を逸してしまっていた。
国境の架け橋となっているヴィクトリア大橋からは滝だけでなく深く刻まれた峡谷も見下ろすことが出来るのだが、何と言っても降下距離111mを誇る世界一の高さのバンジージャンプまでもが高値で営業されているのだ。通常であれば、私も朝一のモーニングバンジーを披露して通行人の胸中に大和魂を刻みつけるところであるのだが、長旅の疲労が抜けきれていなかったため、勧誘に来た原住民を睨みつけるにとどまってしまった。
橋を超えると国境のイミグレーションにたどり着き、そこで$20を支払ってOne day tripビザを入手した。建物の外では多くのパスポートを持っていないバブーンが道端の駐車車両を我が物顔ではしごしている光景が目に飛び込んできた。何故かジンバブエサイドの入場料の半額である$10を支払ってヴィクトリアの滝ザンビアサイドに侵入するといきなり敬礼したリビングストンのお出迎えを受けてしまった。昨日の濡れねずみの教訓により今日は$2を支払って2枚重ね式レインコートをレンタルするとヴィクトリアの滝の総幅1.7kmのうち、1.2kmを支配するザンビア側の滝の観測を始めることにした。
ナイフエッジ・ブリッジと命名されている足元から舞い上がる水しぶきにより、遠めから見ると虹を渡っているようなトリック映像が撮影出来る橋を鋭く渡りきり、ナイフエッジポイントというジンバブエサイドとの対岸で「こちら側の景色の方が絶景ぜ!」といった優越感に浸ることが出来る終着点に到着した。そこに掲げられている汚い字で書かれた看板には「どうせ短い人生だったら清水の舞台から飛び降りるつもりで思い切って勝負して見ろや!」と解釈すべき文言が踊っていた。それを見て若手芸人が満を持して放った鉄板ギャグが全く受けないような滑りやすい環境であることをあらためて思い知らされるのだ。
ザンビアサイドでは水煙を巻き上げる滝そのものだけでなく、まさかこの明るい虹のすぐ先にストンと奈落の底に突き落とされる地獄が待ち受けているとは夢にも思えないおだやかな流れのザンベジ川も見学コースに含まれている。この場所は晴れているのに土砂降り状態に辟易した観光客の絶好の乾燥スポットになっているのであった。
3時間程度の滞在でザンビアから出国するとバンジージャンプの勧誘の魔の手を避けながらジンバブエに戻って来た。一旦ホテルを経由してザンベジ川の上流方面の散策に繰り出すことにした。ヴィクトリアフォールズの町の中心部から北へ5km程歩くと「ザンベジ自然保護区」という看板を出しながらワニを保護するどころかワニ皮クラフトセンターの原料とするためにワニを繁殖させている通称「ワニ園」に乗り込んだ。ここでは大小多数のワニの他に数匹のナイルオオトカゲや独身で人恋しいダチョウが拉致されている実態が確認された。
「Big Tree」と呼ばれる樹齢200年以上のバオバブの木をあたりの野生動物の気配に気をつけながら観察させていただいた。乾季のために落葉し、枯れきった印象を受ける巨木はもうこれ以上観光客が幹に意味のない落書きを刻まないためにチープな柵でしっかり保護されていた。
7月19日(日)
マサよ、君は山上たつひこ原作の「がきデカ」のこまわり君のように「アフリカ象が好っき!!」と叫びたくなる衝動に何度も駆られたことがあるか!?
というわけで、ダイヤモンドの生産地として経済力を蓄え、南部アフリカのなかで最も豊かな国といわれえているボツワナの北東部に、7万頭の象が暮らし、象の生息密度が世界一といわれるチョベ国立公園がある。ヴィクトリアの滝からチョベ国立公園まではわずか70kmの距離でヴィクトリアの滝から日帰りツアーが催行されているので$200をはたいてFORCHE TOURS & TRAVELのChobe Full Day Tripに参加することにした。
おなじみのヴィクトリアの滝の水煙の背後から昇っていく朝日を拝むと午前7時半にツアーのドライバーがホテルにピックアップにやってきたのでバンに乗り込み一路ボツワナとの国境を目指した。道路の両側には野生動物が生息しているブッシュが広がっており、鋭いくちばしと赤のワンポイントが眩しいグラウンドホーンビルという怪鳥がこれから起こるはずの不思議発見を暗示しているかのようだった。
ボツワナとの国境を越える際にジンバブエサイドのドライバーと一旦お別れし、ボツワナからサファリカーを駆ってやってきたガイドの口車にも乗せられてモワナ・サファリ・ロッジという高級ロッジで黒人宿泊家族をピックアップするとついにチョベ国立公園のゲーム・ドライブの開幕となった。屋根付きサイドオープンのサファリーカーで舗装されていない道を数キロ走るといきなり喉を鳴らしながら歩いている杉本彩のような美しいフォルムの豹に遭遇し、思わず度肝を抜かれてしまった。通常日中のゲームドライブでは木の枝の模様の一部となっている睡眠豹しか見つけられないのが関の山なのであるが、今朝のように飄々と地上を歩いている豹を見かけることは非常に稀なのである。
車でチョベ川沿いの砂浜を転がしながらジンバブエの国獣セーブルアンテロープの群れや各種鳥類を観察していたのだが、ガイドのコメントでツアー客のつぼにはまった言葉はインパラの群れをマクドナルドと表現したことであった。チョベ国立公園ではライオンや豹等の捕食者も多いのだが、インパラは比較的捕まえやすいのでファーストフードに例えられ、その気になったインパラもつぶらな瞳で「いらっしゃいませ、こんにちわ」と答えているかのようであった。
ゲームドライブ開始後、2時間程経過してもアフリカのサバンナで感じるあのいつもの感覚に遭遇出来なかった。大鷲が樹上で経過を見守る中、さらにドライブを続けると遂に背筋がゾ~とするような感覚と共に1頭の象が姿を現したのであった!この象は先行するサファリカーを鼻であしらった後、悠然と立ち去っていったのだった。尚、園内には立ち枯れやなぎ倒されて枯れてしまったおびただしい数の木々を見かけるのだが、これは象の所業だということで、国立公園のエコサイクルとして欠かすことの出来ないアクティビティであると説明された。
午前中のゲーム・ドライブが終了するとモワナ・サファリ・ロッジに戻りビュッフェ形式で供される肉やサラダをビールと共に流し込んで午後からのボートクルーズのために体力を蓄えていた。午後2時から待望のクルーズのスタートとなったのだが、チョベリバーでのボートツアーは一昔前のコギャルに言わせると「チョ~ ベリー バッド!」かと思われたのだが、すぐにその予想は覆されることとなった。
チョベ川は下流でザンベジ川と交わるのだが、この地域では川を挟んで4つの国(ボツワナ、ジンバブエ、ザンビア、ナミビア)が隣接している。川には新鮮な草が生い茂っている多くの中洲があり、それらはバッファローやカバ等の絶好のリゾート地となっている。尚、カバはその印象とは裏腹に非常に獰猛な草食獣でライオンに殺害されるよりもむしろカバに殺されている人間の方が多いそうで決してバカにしてはいけないと注意された。
しばらくクルーズを続けていると川面から潜望鏡のようなものが中州に向かって近づいて行く光景が目に飛び込んできた。しばらく観察を続けていると、これは長い鼻をシュノーケリング活用してチョベチョベとチョベ川を渡っている象であることが確認され、ごれぞチョベ国立公園ならではの珍百景の代表だと思われた。
中州の低い岸壁は鳥類の営巣地帯となっている様子で鳥のつがいが交互に卵を暖めあっていた。また、それを虎視眈々と狙っているかのように数多くの野生のクロコダイルが擬似剥製状態で横たわっていやがった。
無事にボートクルーズも終了し、Chobe Full Day Tripの満足度の白黒を付けようと考えていた矢先にゼブラの群れが道路を横断してきたのだが、持参していたデジカメをしまうまえだったので何とか写真に収めることが出来た。
7月20日(月)
恒例の東の空をオレンジに染める朝日を見納めた後、午前10時前に迎えに来たバンに乗り込みヴィクトリアフォールズ国際空港への帰路に着いた。午後12時15分発のSA041便にてヨハネスブルグ、O.R.タンボ国際空港に戻り、高利回りにつられて購入した南アフリカランド建て債券が南アフリカランドの日本円に対する暴落により被った損害分に値する心の隙間を埋めるために南アフリカ航空関係者にいちゃもんをつけようと思ったが、ワールドカップご祝儀の為替レートのゆり戻しを期待して我慢しておいた。
7月21日(火)
SA286便にて午後12時過ぎに香港に到着。引き続き、午後3時10分発NH910便にて成田に飛行中、映画レッドクリフ(赤壁)を見ながら、豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃の時代背景にも拘わらず、ロボットや潜水艦等の最新テクノロジーを時代劇にうまくマッチさせていた仮面の忍者「赤影」の方がむしろ迫力があったはずだと考えていた。
午後8時30分本物の雨の成田空港に到着し、そのまま滝が流れるように流れ解散。
FTBサマリー
総飛行機代 ANA = ¥13,680、南アフリカ航空 = HK$11,085
総宿泊費 $789
総空港⇔ホテル送迎代 $60
総ジンバブエビザ代 $30
総ザンビアビザ代 $20
総Chobe Full Day Trip代 $200
協力 ANA、南アフリカ航空、FORCHE TOURS & TRAVEL