FTBJ夏山登山シリーズ第?弾 南アルプス北岳

猛暑を避けるためにお盆の時期に大雪山、翌週に富士山と八ヶ岳で立て続けに山篭りをさせていただいたのだが、8月最終週になってもまだまだ秋の兆しが見えないため、更なる山岳トレーニングが必要とされる今日この頃である。既に日本最高峰の富士山は制覇してしまっているのであとは階段を下りるように2位、3位と踏破していかなければならなくなってしまっている。ということで、今回は日本で2番目の高さを誇る南アルプスの北岳で下り坂にある体力を鍛え直すこととなったのだ。

2012年8月30日(木)

北岳登頂ツアーの全行程を考慮すると登山決行日の前日に近辺まで移動しておく必要があったため、とりあえず午後から石和温泉駅までのこのこと出て行った。駅前公園の足湯が無料WIFIに対応しているので林家夫妻に気を遣いながらも必要な情報収集を怠らなかった。

夕飯時になったので甲州ほうとうのチェーン店である小作に入店し、地主に気を遣うことなく「おざら」という冷たいほうとうに舌鼓を打っていた。腹も膨れたところで今夜は山梨における登山のベース基地に認定された薬石の湯 瑰泉で体をほぐすことに余念がなかった。

8月31日(金)

雑魚寝客との仁義なき場所取り合戦を回避すべく、中庭のデッキチェアで不貞寝を決め込んだものの睡眠不足は否めなかったのだが、夜明けと同時に起床することが出来たので瑰泉を後にして南アルプス市に向かった。国立公園に指定されている南アルプス北部の峰々へはマイカー規制のため、芦安という町の市営駐車場に車を止めてバスで野呂川広河原という登山拠点まで移動しなければならないので6:30発の登山バスに乗り、山間を1時間程走って広河原インフォーメーションセンターに到着した。

標高1,529mの広河原を8時前に出発すると野呂川に架かる吊り橋を渡り、広河原山荘を横目にスズメバチの襲来に怯えながら北岳への登山をスタートさせた。緑豊かな林の中を歩いていると南アルプス天然水の原料となるはずの清流がマイナスイオンを放散しながら登山者に活力を与えていた。

南アルプスの山中は日本を代表する高山植物の宝庫となっており、色とりどりの可憐な花々とそれらに群がる蝶やミツバチがこの地域の生態系の豊かさの一端を示していた。尚、今回は姿を現すことはなかったのだが、ここには特別天然記念物のライチョウやニホンカモシカもどこかでひっそりと暮らしているのだ。

北岳山頂までの道のりはいくつかのルートがあり、分岐ポイントの立札の道しるべにより迷うことはないのだが、難易度や体力の消耗度はそれぞれ異なるという。標高2,209mの二俣という分岐点に差し掛かる頃には雪があたかも氷河であるかのように斜面を覆っている光景も見受けられ、下流では雪解け水が轟音を立てて石を運び、斜面を削ぐように流れていた。

大樺沢を覆っていた雪渓もいつしか消え、八本歯ノコルというポイントに向かって過酷な登り坂が延々と続くことになる。坂の傾斜が40度~45度になるころには木製の丸太の梯子が連続するコースに差し掛かり、ここが登山の最大の難所だと思われた。

標高2,870mの八本歯ノコルまで這い上がると眺望も開けるはずだったのだが、どこからか湧き出る雲の流れが速く、北岳や日本第四位の高峰間ノ岳の山頂が見えたり、隠れたりしていた。ここから北岳山頂までは約1時間20分ということなのでラストスパートで一気に頂上を目指したいところだが、朝飯も昼飯も食っていないため、そろそろ体力の限界が迫っていたのだった。

標高3,000m近くとなると通常は植生限界となるのだが、夏は雨が多く、冬は積雪が少ないという特徴を持つこの地域は森林限界も高く、山頂付近であっても高山植物のお花畑が広がっているのだった。

マサよ、君は南アルプスの人気ナンバー1の秀峰には来ただけだったものの、言いようもない達成感と湧き上がる雲に包まれて我を忘れたことがあるか!?

というわけで、5時間もの長時間をかけてついに日本第二位の標高3,193mを誇る北岳の頂上を制覇した。ここには富士山頂のようなお鉢巡りやお宮参りのアトラクションがないので、登山者は短時間の滞在で下山することが通例となっているようだ。頂上でたむろしている他の登山者は頂上付近の山小屋で酒盛りをすると息巻いているのだが、私は北岳には来ただけなのでかっぱえびせんを食ってすぐに下山する心づもりであった。

北岳登山の行程は通常一泊二日で日帰りを行う輩はめったにいないのだが、少数派である私は何とか最終バスに間に合うようにそそくさと下山を開始した。帰りは異なる景色を見るために行きとは違うルートを取っていたのだが、山頂から10数分歩くと青い屋根が眩しい標高3,000mの肩の小屋に到着した。小屋の周辺には雨水を貯めるためのドラム缶やプロパンガスの大きなボンベが置かれているのだが、これらの機材はどうやって運ばれたのだろうと訝りながらペースを早めていった。

立札が示す標準時間で下山していると到底バスの時間に間に合わないので転ばない程度に速度を上げて歩いていると持病?の左膝ではなく、右膝の方が痛み始め、休憩後の歩き始めには容易に力が入らない状態に陥っていた。アルピニストの野口健がマイバッグに入れて持ち歩いている世田谷自然食品のグルコサミンを服用すれば少しは症状も改善されるのではないかと考えたが、頭の中で回っていたのは♪グル グル グル グル グルコサミン♪というリズムだけであった。

グルグルリズムの効能により、標準下山時間で5時間くらいかかるところを3時間程度で駆け下りると午後4時半の終バスに何とか間に合わせることに成功した。右足を引きずるようにバスから降りて車に乗り換えると一目散にベース基地である瑰泉に帰還し、ひたすら温浴治療に勤しむこととなったのだった。

9月1日(土)

グルコサミンに頼らずに右膝の痛みを和らげることが出来たのでさらなるリハビリのために富士山麓を徘徊することにした。道の駅富士吉田で富士山伏流水の給水所が賑わっていたので富士吉田市出身の金メダリストに見守られながらバナジウムを含有する富士の天然水をいただいた。

あいにくの曇天のため、富士山の勇姿を拝むことが出来なかったので今回は水にまつわる名所を訪れることにした。河口湖方面から山中湖に向かう途中の忍野村に忍野八海という富士山の雪解け水が80年の歳月をかけ濾過し、湧水となって8か所の泉を作っている名所があるので寄ってみることにした。この湧水は国指定の天然記念物、名水百選に指定されているため、常に多くの観光客で賑わっている。

八海を全て見て回るのは面倒くさかったのでとりあえず見学は主な池にとどめることにした。菖蒲が生い茂っている菖蒲池をチラ見して、風のないときには富士山がはっきりと映る鏡池が雲しか写し取っていないのに憤りを覚えながら忍野八海の観光の中心部に向かって行った。

湧出量ならびに景観は八海中随一であり、直径約12m、潜水深度約5mを誇る涌池は透き通るような神秘性をたたえており、その隣の流水口からは富士山の雪解け水が懇々と湧き出ている。尚、この天然池は溶岩で形成され、一見すると地上の池からは見えにくいが横穴が沢山開いていると言われ、1987年にテレビ朝日の番組の水中カメラマンが潜水したのだが、帰路を見失い、酸素切れで帰らぬ人となったという忌まわしい過去まで持っているのだ。

濁池という清らかではない池の隣の建家では水車の動力を利用してソバを挽いており、名物のソバが近隣の食堂で安値で提供されている。名物吉田うどん屋も近くにあったので今日の昼飯は\500の肉玉うどんと\300のかけそばで手軽に済ませておいたのだった。

忍野八海の中心にあり、土産物屋から歩道が続いている中池は水深8mの透明な池でその水底には賽銭の小銭と一緒に観光客が奉納したはずのデジカメも沈んでいたのだった。さらに中池を取り囲むように作られた人口の池では黄金の鯉が悠々と泳いでおり、中にはイケメンの人面魚がいるとほのめかされていたのだが、私が目にしたのは通常の魚顔の鯉だけであった。

忍野八海の清流である涌池と中池では飲料も可能であるのだが、流れる水を持ち帰るためには\150を支払って500mlのペットボトルを買わされるシステムになっている。こうすることによって無秩序な取水に制限を加え、水汲み場に人々が殺到することのないように厳格な管理がなされているのである。

FTBサマリー

総宿泊費 ¥2,000

総バス代 ¥2,200

総ガソリン代 ¥4,440

協力

薬石の湯 瑰泉(かいせん)(http://www.yu-kaisen.jp/)、山梨交通、世田谷自然食品

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