FTBJ極楽浄土高野山ツアー

マサよ、君は空と海から聞こえてくるかのような「高野山に行こうや」という天の声に誘われて密教の聖地にお参りしなければならないという義務感を覚えたことがあるか!?

というわけで、「晴れむ(806年)心の真言密教」というお経を唱えながら空海が中国から真言密教を伝えたと言われる年号を覚え、日本史の偏差値を常に80以上の高位置にキープしていた時から高野山に修行に来なければならないと考え続けてきた。今ではこの霊場は世界遺産に指定され、世界各国から仏教徒ではないはずの数多くの観光客で溢れかえっているのでその実態を清めるために参拝させていただくことになったのだ。

4月17日(土)

午前7時発ANA013便で8時過ぎに伊丹空港に到着し、空港バスでなんばに向かった。難波はかつて野村監督率いるホークスという球団を持っていた南海によって支配されているのだが、今では南海キャンディーズの傘下に成り下がっている。

早速南海高野線快急電車に乗り、1時間40分程度で極楽橋駅に到着した。しかし、極楽橋で極楽気分を味わう暇もなく、接続の高野山ケーブルカーに乗り込み下界から標高900mまで5分程度で昇天すると高野山駅に降り立った。高野山駅前は南海りんかんバスによって仕切られている様子で環境に配慮したプリウスタクシーもリコールを恐れず果敢に営業活動を行っていた。

とりあえず、どこへ向かえばいいのかわからなかったので、外人団体観光客が乗り込もうとしている奥之院行きのバスに乗り込んだ。バスは専用道路をゆっくりと走りぬけ、外人団体が下車した高野警察前で降りると出頭する代わりに桜咲く寺院の庭先に目を奪われながら高野山の入り口になっている女人堂まで引き返した。明治5年まで女人禁制であった高野山へは女性はここより山内に入ることが許されず、細く険しい女人道を通って大師御廟へお参りをしていたのだ。

徳川家霊台のチケット売り場で高野山参詣講待遇之証(奉納金1,500円)という主要なファシリティを参拝出来るお得なセットチケットを購入すると寛永20年(1643)に三代将軍家光が建立した徳川家霊台を見学させていただくことにした。ここは家康と秀忠の両霊屋で、白木造りの外観に金銀箔を押した極彩色の厨子は日光東照宮を彷彿とさせる豪華な造りであると見受けられた。

霊場高野山は弘法大師が嵯峨天皇の弘仁七年(816)真言密教の根本道場として定められ、国の平和を祈り国民に安らかな生活への道を伝え、併せて末徒の修禅観法のため、また自らの入定の地とする崇高な目的をもって開創せられたのだが、その総本山である金剛峯寺に謹んでお参り申し上げることにした。金剛峯寺の名称は元々高野山一山の総称として用いられていたのだが、この寺自身は文禄二年(1593)豊臣秀吉が亡母の菩提のために建立、更に文久三年(1863)再建されたのが現在の建物である。

金剛峯寺内部でまず私の目を引きつけたものは2015年の高野山開創1200年に向けて開発されたイメージキャラクター兼ゆるキャラの「こうやくん」であった。また、奥之院霊木の高野杉が輪切りにされてその長い樹齢を示す年輪をひけらかせていた。金剛峯寺内部の各間を彩っている襖絵は写真撮影および写生が禁止されているのだが、高野草創という題目の聖地高野を発見した際に先導していた白黒二匹の犬の絵は勝手に写ってしまっていた。

蟠龍庭という石庭としては我国最大の庭に目を奪われていると奥の新別殿でお茶のおもてなしがあるとのことだったのでお茶とお煎餅で軽くくつろがせていただいた。さらに寺内には修行僧の旺盛な食欲に対応するための台所も供えられており、一度に二千人分のご飯が炊ける「二石釜」が農林水産省のお墨付きでももらったかのように崇められているのだった。

弘法大師が受け継がれ展開された真言密教の思想を具現化した聖地である壇上伽藍に登壇させていただいた。ここには高野山のシンボルとして君臨している根本大塔を中心に金堂、東西の各塔、高野山に残る最古の建物である国宝不動堂が配置されており、一山の重要な法会のほとんどはここで行われることになっているのだ。

壇上伽藍を後にして東に向かって歩いていると西部警察でサングラスをかけた渡哲也がショットガンを撃ちまくっている感覚を覚えたのでふと上を見上げると高さ25.1mの大門がそびえていた。金剛力士像に守られた一山の総門である大門は威風堂々とした門構えで、現在のものは宝永二年(1705)に再建されたものである。

1200年の歴史を持つ高野山に残る国宝、重文、県文化財や貴重な資料を保管し、公開する霊宝館が高野の用心棒により警護されていない事実に衝撃を受けたので北条政子の発願により源頼朝菩提のために創建された金剛三昧院で野ざらしになっている国宝多宝塔を見て溜飲を下げておいた。

マサよ、君は高野山では寺が宿坊という宿泊施設になっており、坊主丸儲けの構図が延々と受け継がれていることを知っているか!?

ということで、本日の修行先である福智院に「たのも~」と言ってチェックインするとそこには高野山バス停で一緒になった外人達が集団で宿泊するというインターナショナルな事実に驚愕してしまった。福智院は高野山で唯一天然温泉を備えた宿坊で客室は美しい庭園を囲むように展開されており、内部には骨董鎧兜等がケースに入れられて展示されていた。

宿坊では通常写経体験や朝のお勤めの参加といった催し物が売りになっているのだが、写経体験はワープロがなかったので断念する代わりに部屋を訪れた坊主に朝6時からのお勤めには参加するとコミットさせられると同時に「身体健全」を祈願するお札を¥3,000で売りつけられた。何でも¥3,000分のお札の有効期限は1ヶ月とのことだったのだが、シマンテックのソフトのようにオンラインで更新出来るかどうかは別途サポートセンターに確認すべきだと考えた。

天然温泉露天風呂で体調を整えた後、空海の末弟子であるはずの見習い従業員が「飯でも食うかい」という面持ちで精進料理の膳を運んできた。何故か寺院内には禁酒令は敷かれていなかったのでビールを飲みながら身体健全になるはずの精進料理に舌鼓を打ちながら修行の夜は更けていった。

4月18日(日)

夜間の冷え込みと修行の緊張感で眠れない夜を過ごしたおかげで朝の5時半にはすでに覚醒状態を維持出来ていた。朝のお勤めでは座禅を組まされ、少しでも無駄な動きをすると「色即是空」と言われて板で殴られて痛い思いをするのかと恐れおののいていたのだが、意外にも本堂には椅子が用意され、ストーブには青白い炎が灯っていた。フランスから来ている外人団体客を含めて宿泊客が続々と本堂に集まってくると午前6時より読経が始まった。遅れてきた外人を地べたに座らせる一方で私は椅子に座って40分程度のお勤めを余裕でこなしていた。お勤め終了後に本堂の引き戸が明けられるとそこには福智院の本尊である愛染明王の名を冠した見事な愛染庭が姿を現したのだった。

福智院での修行を終え、無事に解脱を果たすと徒歩で奥之院を目指すことにした。道行く途中で摩尼塔というビルマで亡くなった戦没者のために建てられたお堂を見学することにした。そこでは水島上等兵も爪弾いたであろうビルマの竪琴や地獄図、極楽図といったものが私の目をひいた。

桜と盆栽のような松の木のコントラストが美しい寺院を通り過ぎると奥之院の入り口である一の橋に到着した。そこから先は見事な杉林の中に数多くの歴史上の人物の墓が次々に姿を現すこととなった。武田信玄、伊達政宗、明智光秀らの墓は例外なく苔むした年代物であるのだが、21世紀に建てられたであろうパナソニック墓所の墓石は輝きを放っていたのでとりあえずUSBメモリーを内蔵したお守りを早期にリリースするように祈っておいた。

弘法大師御入定の地奥之院は弘法大師信仰の中心聖地として、壇上伽藍に比す高野山のもう一つの聖域となっている。玉川の清流を背にした水向地蔵に水をかけ、奥之院御廟で線香を手向けながら空海が後悔することなくこの地に今でもおわしますような雰囲気を感じながら高野山から下山することとなったのだった。

このツアーで何回目かの南海急行電車で大阪市内に戻ると弘法大師よりも古い太子である聖徳太子が推古天皇元年(593)に建立した日本仏法最初の官寺である四天王寺に参拝することにした。四天王寺は度重なる災害のため、創建当初の姿はしのぶべきもないが、伽藍配置は飛鳥時代の姿を今に伝えているのだ。

中心伽藍のチケット売り場のおばちゃんが私の財布の中のJAFの会員証を目ざとく見つけたおかげでマサであれば¥300かかるところを私は¥200で拝観券を手に入れることに成功した。中心伽藍で一際目立つ五重宝塔は昭和34年8度目の再建であり、造りは鉄筋コンクリートであることが時代の流れを感じさせる。また、仁王門にはカラフルな金剛力士像が大きな目を見開いて睨みを利かせているのだった。

布袋寅泰よりも明らかに腹の出ている「福をよぶなで布袋尊」を撫で回した後、何故かここでも祀られている弘法大師修行像にお参りし、おびただしい数のそのミニチュアが一体3万円で奉納されるという実態に愕然としてしまった。

四天王寺ではるか昔の飛鳥時代への思いを馳せることが出来たので、寺を出て天王寺方面に向かっているといつの間にか時が経った様子で新世界に紛れ込んでいた。B級テレビ番組の取材を数多く受けていることを心の拠り所にしているたこ焼屋で8個入り¥300のたこ焼を食った勢いで激しい競争の中で一番すいている串揚げ屋に吸い込まれた。その串揚げ屋で「おまかせ10本セット」を¥1,250で発注したのだが、草食系を中心とした最初の5本が配送されてから30分以上経っても残りの5本が来なかったので時間がないから帰ると言ったところ、¥1,250がまるまる返金されることになり、結果的に草食系の5本がただになったのであった!

FTBサマリー

総飛行機代 ただ

総宿泊費 ¥17,850(2食付)

総南海代 ¥3,020

総空港バス代 ¥1,110

総地下鉄代 ¥470

協力 ANA、楽天トラベル、南海電鉄、JAF

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