FTBJ秋の乗鞍のらりくらりツアー

ゴールデンウィークよりも強力な9月のシルバーウィークの出現により、日本列島の行楽地はどこもかしこも混雑の様相を呈してしまい、もともとシルバーウィークの中日に予定していた乗鞍ツアーものらりくらりとしか進まない車の流れにしびれを切らし、中止に追い込まれてしまっていた。

何とか9月20日(日)の夕刻に諏訪湖畔に辿りつき、湖に佇む愁いを帯びたスワンボートをボ~と眺めながら、このツアーを一度はお蔵入りにするしかないとも考えたのだが、気を取り直し10月の連休にリベンジすることと相成ったのだ。

10月9日(金)

夕刻八王子インターから中央高速に乗り、午後9時前に諏訪湖インターに到着し、今回のツアーが成功に終わるものかどうかそわそわしながら午前0時前まで時間をつぶしていた。

10月10日(土)

日付の変わった午前0時5分に松本インターを通過し、高速料金を週末料金の1000円に値切った後、今日の宿泊地である松本ウエルトンホテルに引き篭もり、のらりくらりと長い夜を過ごしていた。

午前9時頃にホテルを抜け出し、国道158号線を一路乗鞍、上高地方面に向かって車を走らせた。3連休の初日ではあるが、車の流れはスムーズで午前10時前には乗鞍高原観光センターに到着することに成功した。中部山岳国立公園を代表する雄大な自然を誇る乗鞍岳はマイカー規制がしかれており自家用車で来やがった観光客は指定の場所で代替バスに乗り換えなければならないことになっている。

乗鞍高原鈴蘭地区で日野自動車が開発したディーゼルエンジンと電気の両方を動力とするハイブリッドシャトルバスに往復¥2,400の高値を支払って乗り込むと1時間弱のドライブでバスが登っていける日本最高地点である標高2,702mの畳平に到着した。畳平と言えば去る9月19日に放浪のツキノワグマが登場し、観光客や土産物屋の従業員合計9名に重軽傷を負わせた事件が記憶に新しい。このオスのクマは数千畳はあろうかと思われる畳平を縦横無尽に走り回り、たたみかけるように次々に人間に襲い掛かり、ついには猟友会の銃弾に倒れる結果となってしまった。サラリーマン金太郎魂を持つ私が現場にいれば何とか生け捕りにすることも可能であったろうが、今回は月に向かって不幸なクマの冥福を祈っておいた。

乗鞍岳は、北アルプスの南端に位置し、剣ヶ峰(3,026m)を最高峰に、23の峰と7つの湖と8つの平原があり、四季を通じて美しい景観を楽しむことが出来、その姿が馬の鞍に似ていることから「乗鞍」と呼ばれているのだ。畳平から剣ヶ峰まではのらりくらりとした快適な登山環境が提供されているので早速散策に乗り出すことにした。

ハイマツという森林限界を超えた高地に生い茂っている低木の松を横目に、撮影日には体を絞ってくるほとのプロ意識を持つ熊田曜子のようなグラビア系クマの襲撃を期待しながら登山をスタートさせた。折からの寒気の影響で周辺温度は氷点下を切っていると思われ、山肌にはうっすらと雪化粧が施されていた。

乗鞍山頂周辺にはコロナ観測所や宇宙線研究所といった地球外環境を観測、研究するファシリティが重要な役目を果たしていると同時に宿泊設備も兼ねている肩の小屋という重い荷物で肩の凝った登山者を癒すはずの山小屋が登山道のかたわらに佇んでいるのだ。

吹きすさぶ強風に耐えながら、畳平出発後約1時間10分で剣ヶ峰に這い上がることに成功した。頂上には凍えた鳥居を擁する神社が祀られており、各種お守りやおみくじの販売により3,000m級の高地であっても観光客の財布の紐を緩ませることに余念がないようであった。

雲の流れが激しい剣ヶ峰で岩の上に座ってチョコレートを食っている私に無理やりシャッターを押させたオバタリアンの恐怖に耐え切れずに下山を余儀なくされると私の凍った心を溶かすかのように権現池が雲間に現れた。畳平まで下山し、流れる雲の切れ間から周囲の山々の眺望を堪能出来たのでバスセンター建物の地下に潜り、乗鞍自然センターで剥製に加工されている天然記念物のニホンカモシカをチラ見した後、バスで乗鞍高原観光センターに帰っていった。

本日の宿泊地である乗鞍高原温泉ロッジグリーンウッドの硫黄泉で登山で冷えた肉体を常温に戻した後、待ちに待った夕食の時間と相成った。馬刺し、イワナのから揚げ、きりたんぽ鍋などをおいしくいただいているとふいにロッジのおかみがこの宿の常連客であるおっさんが三味線を披露するので夕食時のすばらしい余興の時間として過ごしてほしい(訳:別に聴きたくもないだろうが宿の常連客なので目立ちたがり屋のオヤジの要求は断れへんので軽くつきあってくれや)とのたまったので拝聴させていただくことにした。

おっさんは小学校の音楽でこきりこの竹が七寸五分であることを肝に銘じさせられたこきりこ節をはじめとして2曲を披露し、満足な表情を浮かべて家族の待つテーブルへと引き上げていったのだった。

10月11日(日)

早朝かすかな硫黄の風味を漂わせながらロッジを後にすると快晴の乗鞍岳を見上げて乗鞍高原の見所のひとつである善五郎の滝へ向かった。乗鞍火山の火山活動により形成された善五郎の滝の所以は昔、大野川の里に住んでいた善五郎というきこりがこの滝で釣りをしていたところ、釣針にかかった大きなイワナに滝壺に引き込まれ命からがら逃げ帰り、里人から「イワナいこっちゃない!」と言われたことから善五郎の滝と命名されやがったのだ。

さらに長野県名勝であり、日本の滝百選のひとつに数えられる三本滝に打たれに行くことにした。三本滝は水源も趣も異なる3つの滝が一ヶ所に合流していることが特徴となっている。確かにこの滝は日本の滝百選に選ばれたことも納得するほどの景観を誇っているのだが、善五郎のようなまぬけがいなかったため、平凡な名前に成り下がっていることが唯一残念な点であると思われた。

マサよ、君は新穂高ロープウエイに揺られて間近に迫る北アルプスの眺望に圧倒されたことがあるか!?

というわけで、乗鞍高原から竜鉄也の推薦する奥飛騨慕情を抜け、連休中日でロープウエイへの道のりが超渋滞している新穂高までのらりくらりとやってきた。奥飛観光開発が仕切っているロープウエイは穂高岳への岐阜県側からのアクセスを狙い往復¥2,800もの大金を徴収して第1ロープウエイと第2ロープウエイによる満員空中散歩の機会を提供してくれるのだ。

新穂高温泉駅を出発する45人乗り第1ロープウエイはわずか4分で鍋平高原駅へと到着した。そこから、しらかば平駅まで徒歩で移動し、いよいよクライマックスである第2ロープウエイへと乗り込んだ。東京製綱(株)が開発した極太ロープは日本初の2階建て120人乗りゴンドラを吊り上げ、たまに道半ばで故障により宙吊りになるという過去の苦いパフォーマンスをものともせず、約7分で西穂高口へと観光客をピストン輸送している。途中第1号~第3号鉄塔を通過する際にはゴンドラが前後に揺れるので観光客は絶対に吐いてはならないように気を引き締めておく必要があるのだ。

ゴンドラの車窓から見る景色は高度を上げるにつれ、紅葉の色も濃くなり、中部山岳国立公園が誇る北アルプスを代表する3,000m級の槍・穂高の山々を眺めているとあっという間に終点の西穂高口に到着した。西穂高口展望台は標高2,156mにあり、北アルプスの山々がほぼ360度の視界で見渡すことが出来るという特典からミシュラン・グリーンガイド・ジャポン2009によって☆☆の評価さえ与えられているのだ。また、やまびこポストという通年集配型としては国内最高所のポストが設置されているのでマサに着払いで絵葉書でも送りつけてやろうかと思ったが、住所がわからないので断念した。

ところで、展望台はおびただしい数の観光客で溢れかえっており、喫茶軽食「マウントビュー」のメニューはほぼ売り切れ状態で帰りのロープウエイは長蛇の列をなしていた。途中整理券の配布で迫り来る観光客をさばき始めたのだが、改札時の整理券番号の場内アナウンスで自分の番号がなかなか呼ばれない素人観光客がいらだちの様相を呈していた。また、不幸にも高山病の症状を発症した観光客には特別に酸素スプレーが与えられ、素人であっても何とか無事に観光を成し遂げることが出来るバックアップ体制さえ確認することが出来たのだ。

新穂高ロープウエイではほとんどの時間を列に並ぶ観光客の後姿を見て過ごした後、車に乗り込み長野県安曇野市方面に向かっていたのだが、案の定上高地渋滞にひっかかってしまった。午後7時過ぎに何とか今日の宿泊地である穂高温泉郷リゾートホテルビラあずみ野に到着し、地元の素材を生かした自慢の信州料理に舌鼓を打ち、源泉かけ流しの露天風呂で行列の出来る渋滞観光の疲れを洗い流していた。

10月12日(月)

早朝ビラあずみ野を後にし、のらりくらりとしか進まない帰りの渋滞にはひっかかりたくなかったのでとっとと撤収させていただくことにした。

FTBサマリー

総ガソリン代 ¥5,582

総高速代 ¥3,500

総宿泊費 ¥32,800

総シャトルバス代 ¥2,400

総ロープウエイ代 ¥2,800

協力 

楽天トラベル、松本電鉄、奥飛開発観光K.K.

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