日本人のリゾートの定番は沖縄や八重山諸島であるが、アメリカ人やカナダ人にとっての沖縄的リゾートとして美しい海と珊瑚礁に恵まれ、「カリブ海の宝石」との異名を取るベリーズという中南米の小国が君臨している。四国ほどしかない英連邦王国は美しい海と世界屈指の珊瑚礁資源に恵まれているものの、日本人にとってはマイナーなリゾート地くらいの感覚であろうが、カリブ海にぽっかりと空いた魅惑のブルーホールは世界中から観光客を吸い寄せているのである。
2016年12月29日(木)
10時50分発NH174便は定刻通りに成田を出発し、約12時間のフライトでヒューストン・ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港に午前7時頃到着した。United Clubのラウンジで数時間をやり過ごすと11時35分発UA1569に乗り換え、約2時間半のフライトで午後2時頃にベリーズシティに到着する運びとなった。
早速空港で客待ちしているタクシーに乗り、ベリーズ・シティに向かったのだが、市内自体は大した見どころもないのでリゾート地へのフェリーが発着するWater Taxi Terminalで下車することにした。何とか3時発サンペドロ行きの便にぎりぎり間に合ったので慌ただしく荷物を預け、チケット売り場で往復チケット(US$35)を購入するとBeliez Expressが運行する小型のボートに乗り込んだ。
さすがにホリデーシーズンだけあって、Water Taxi内は満席で皆方を寄せ合うようにして猛スピードで疾走するボートの振動に耐えていた。約1時間程で最初の寄港地であるキーカーカーに到着し、そこで多くのバックパッカーを降ろすとサンペドロへ向かう乗客は何故か別のボートに乗り換えさせられ、さらに30分疾走して午後4時半頃に今回のツアーの拠点となるサンペドロに到着した。
ベリーズ・シティで慌ただしく乗船したのが祟ったのか、チェックインしたスーツケースが到着していないというトラブルに見舞われたため、港近くのビーチバーでナッチョスと美しい海を肴に地元のBELIKINビールを飲みながら1時間程時間潰しをさせていただいた。
次の便が到着した5時半には日が西に傾きかけており、荷物を受け取るとそそくさとタクシーを探して今回の宿泊先であるRoyal Caribbean Resortへと急いだ。道中饒舌なタクシーの運ちゃんがサンペドロの町に関する様々なことをしゃべり倒してくれたので約20分かそこらでここで生活するのに困らない情報を手にしていたのであった。
Royal Caribbean Resortはさほど高級ではないもののしっかりとハイシーズン価格が設定されており、Reception棟に到着するとマヤ人の風貌を持つ受付ギャルにビーチに程近いコテージに案内していただいた。日もとっぷり暮れ、ウエルカムドリンクであるラム酒のカクテルのチケットをもらっていたのでビーチサイドのバーで南国の風に吹かれ、小エビをつまみに長旅の疲れを癒していた。
12月30日(金)
朝食を取るためにしばし隣のリゾートの広大な敷地をさまよい、コーヒーショップのお姉ちゃんと雑談に興じた後、Royal Caribean Resortに戻るとプールではダイビングの講習が執り行なわれていた。敷地内のやしの木にたわわに実っているココナッツは手の届く範囲にあり、海に突き出ている桟橋を歩くと透明度の高いカリブ海の眺望がどこまでも続いていた。
ベリーズの中では高級リゾート地としての地位を確立しているサンペドロの主要交通手段は島内に4,000台以上は登録されているというガソリンで動くゴルフカート($60/日)ということなので早速Resortでレンタルするとドライバーでティーショットを打つ勢いで颯爽とサンペドロの散策に繰り出すことにした。
ベリーズにはキーと呼ばれる砂とサンゴ礁の小島がたくさんあり、キーのなかで最も大きなアンバーグリス・キーの中心となっている町がサン・ペドロである。町の中心部の道路は狭く、舗装されているのだが、ゴルフカートのアクセルをべた踏みしても速度は15km/時くらいしか出ないようなので、いかに多くのカートがひしめいていても交通事故は起こりえないような交通事情だと思われた。
Water Taxiが発着する桟橋が町の中心になっており、そこから北へ続くビーチは散策するには格好の景色とさわやかさを提供している。やしの木の陰では家族がピクニックを楽しんでおり、子供たちは透明度の高い浅瀬ではしゃぎまわっていた。
ボートが行き来する浅瀬に架かる橋を超え、北部のリゾート地帯に侵入すると木造4階建ての建物が目についた。ハリケーン直撃地帯での建造物なので高い強度とエコな概観がうまく両立されているように思われた。ホテル等でレンタルするカートは性能が制限されている様子で町外れに来ると地元民が転がす高性能カートに次々と抜かれることになる。舗装していないぬかるみ道路に突入すると私のカートはスタックし、後輪はむなしく空回りを繰り返すだけであった。そこに現れた屈強なリゾート従業員がその人並みはずれた腕力でカートの後方を抱え上げ、アクセルを全開させると何とかぬかるみから脱出することがかなったのだった。
たそがれ時に町中に戻ると浮遊するニコニコマークのふもとに海上に浮かぶレストランがにぎわっていたので夕食はここで取ることにした。キンキンに冷えたBELKINビールとナッチョスで乾杯し、シーフードを食らっていると海辺の景色は夕暮れから夕闇へとしっとりと変貌していった。
宿泊地に帰る道すがらに飲料水を仕入れるべく、サンペドロでは最大手だと思われるスーパーに立ち寄った。ここで売られているスナック類はせいぜいポテチかナッチョスの類のみだと高をくくっていたのだが、お菓子の陳列棚を賑わしていたのはおびただしい種類の日本製駄菓子の集団だったのだ。
12月31日(土)
ベリーズに来てブルーホールを見なければ帰国した後にブルーな気分に苛まれることは必至だと考えたので昨日ブルーホール・スノーケリングツアー($259.38、入園料込み)への申し込みを済ませておいた。Royal Caribbean Resortの桟橋に午前5時半に迎えに来る手はずになっていたので暗がりの中で待っていると20分ほど遅れてやってきたボートに乗り込んだ。いくつかのResortで何組かをピックアップし、マリンアクティビティのメニューが豊富であるはずのRamons Villageという高級Resortで下船し、そそくさと手続きを行った。少し大きめのクルーザーに乗り込むとスコールの洗礼を浴びたおかげで夜が明ける頃には見事な虹がカリブ海をまたいでいた。
6時前に出港となったクルーザーは外洋に出ると荒波の中、船体をバウンドさせ、参加者の臀部にダメージを与えながら2時間半程の航海で念願のブルーホールに到着した。世界遺産に指定されているベリーズ珊瑚礁保護区はオーストラリアのグレートバリアリーフに次ぐ2番目の規模を誇る環礁地帯で、その中心となるブルーホールは深さ125m、直径300mを誇り、空から見ると海の中に開いた青い穴がすべてを吸い込んでいくように見えるという。
あわただしく準備を始めた参加者たちはダイビング組とスノーケリング組に別れ、船上でのオリエンテーションの後、それぞれ海へと吸い込まれていった。
海中の透明度は非常に高く、ガイドの誘導に従ってサンゴ礁への接触を避けながら環礁地帯を揺ら揺ら漂っているとカラフルなサンゴとその周辺を遊泳する白身魚系の魚がマサに手の届きそうな範囲でうごめいていたのだった。
30分ほどで船に引き上げられ、上部のデッキからあらためてブルーホールを見るとその海の色の違いははっきりと確認出来たのだが、全体像を見るにはやはり高値の遊覧飛行か、さらに高値のブルーホールへのスカイダイビングに参加すべきではなかったかと思われた。
ブルーホールを後にしたクルーザーは同じく珊瑚礁保護区で世界遺産のハーフムーン島へと舵を切った。天国に何番目かに近い島であるはずのハーフムーン島周辺の海はこれまた抜群の透明度を誇っており、島に上陸するや否やいきなりスノーケリングスポットへの移動と相成った。
海の中はサンゴと魚の博物館の様相を呈しており、魚群がひしめいている方向へ向かってFinを蹴ると魚の隊列は日体大が誇る「集団行動」を凌駕する規則正しさで一斉に方向転換し、人類の接近をたくみにかわしていたのだった。
スノーケリングを終え、ダイビングチームが合流するとお待ちかねのランチタイムとなった。ナッチョスはなかったものの赤飯系のライスやカリブ海風の味付けで煮込まれたチキンは美味であり、昼食後は海亀産卵のために保護された白砂のビーチの上でしばしくつろぎの時間を過ごさせていただいた。
青と白のコントラストがまぶしいハーフムーン島を後にするとクルーザーは最後のアクティビティスポットであるロングキーに停泊した。ここでは潜水しているダイビングチームのほぼ真上でスノーケリングが行われ、船上から餌付けされた魚と戯れながらダイバーの奮闘を高みから見下ろすことが出来たのであった。
ということで、すべてのアクティビティが終了すると参加者は猛スピードで疾走するクルーザーの上で疲れ果てて寝込んでしまっていた。午後5時過ぎにRamons Villageに帰還し、支払いを済ませると送迎ボートでRoyal Caribbean Resortへの帰路についたのだった。
部屋のシャワーで海水を洗い流し、ブルーな気分で余韻に浸っていると思いのほか腹が減っていることに気づいたので飯を食うために外に出ることにした。町中に向かうメインストリート沿いにはResortが軒を連ねているのだが、その中でも一際豪華そうな看板のレストランに引き寄せられていった。グラスシャンパン付きのディナーコースがおすすめということでメニューの説明を聞くのもほどほどにまずは発注することにした。豪華ディナーは前菜のロブスターと野菜のクレープ風トルティーヤ巻きからはじまり、メインのビフテキは軽く1ポンドを超えているかのような重量感を誇り、デザートは日本のレストランで供される物の数倍のボリュームに感じられ、スイミングですり減らせた脂肪分が見事にオフセットされたのであった。
2017年1月1日(日)
真っ赤に日焼けした柔肌のヒリヒリ感を土産に定刻午前11時にRoyal Carribean Resortをチェックアウトすると自動車のタクシーでWater Taxi乗り場に移動し、11時30分発のキーカーカー経由ベリーズシティ便に乗り込んだ。今日も船内は満席で最後尾のオープンスペースに席を取ったカナダ人のおね~ちゃんは水着姿で激しい波しぶきを浴びながら1時間半の航海に耐えていた。
Water Taxiがベリーズシティの桟橋に到着するとリゾート仕様の大荷物を待っている観光客は船からの荷物降ろしと移動、さらに観光客が手出し出来ない囲いの中に荷物の台車が放置されている間は指を加えて待たされる仕組みになっている。何とか半券と引き換えに荷物を取り戻すと速攻でタクシーを捕まえ空港への帰路についた。
ベリーズシティ空港のターミナルは発着便数が少ないせいか非常に狭く飯を食うのもままならなかったのでとりあえずBELKINビールを2本ほど空けて出発までの時間潰しに興じていた。17時発UA1406便は定刻どおりに出発し、定刻19時半過ぎにヒューストンに到着した。空港からホテルのシャトルバスでHoliday Inn Houston InternationalAirportに移動すると隣のレストランは正月時間のため午後9時で閉まってしまったため、道路向こうの24時間レストランで夕食を取る運びとなった。中米旅行の余韻を引きずるようにTacoサラダとシーフードプレートを発注した。シーフードは新鮮な魚介類の盛り合わせを期待していたのだが、出てきた料理は白身魚のフライ、魚のすり身団子のフライ、エビフライ等油物のてんこ盛りだったので、♪カナブンboonでもエビinビン♪と唱えて萎えた気持ちに応えるしかなかったのだ。
1月2日(月)
早朝蒸し暑さを感じながら空港へのシャトルバスに乗り込み、搭乗手続き後United Clubラウンジの窓から雷の閃光を眺めていた。搭乗ゲートに移動すると雷を伴った荒天のため、搭乗時間が1時間ほど遅れるというアナウンスがむなしく流れていた。10時15分発予定だったNH173便は1時間ほど遅れてヒューストンを出発し、ホイットニーの怒りが静まった頃、安定飛行へと移行したのであった。
1月3日(火)
定刻より1時間遅れの午後4時過ぎに成田に到着し、ブルーな気分を引きずらないように職場復帰しなければならないと肝に銘じながら流れ解散。
FTBサマリー
総飛行機代 ¥238,690
総宿泊費 ¥79,575、$98.99
総タクシー代 $75
総Water Taxi代 $35
総ゴルフカート代 $60
総ブルーホールスノーケリングツアー代 $259.38
協力 ANA、ユナイテッド航空、Booking.com、IHG、Ramons Village