日本一の桃源郷山梨花見ツアー

ここ10年近く週末は山梨にいることが多いのだが、山梨には富士山以外にも観光資源が多いことに気づかされていた。とりわけフルーツ王国との異名を取る笛吹市、勝沼、一宮町周辺は日本一の桃源郷の名にふさわしく、4月になると町中がピンクに染まってしまうほど桃の花で埋め尽くされる光景に圧倒されるのだ。日本の花見は桜という固定観念を打ち捨て、ここ数年は山梨で桃の花見と洒落込んでいるのだが、今年は桜の満開と時期が重なったため、一粒で二度おいしい思いをすることが出来たのだ。

4月9日(土)
見頃がすでに過ぎてしまった東京都心部の桜をしり目に中央高速道を西に向かって車を飛ばしていると気温の低い八王子あたりの桜はまだまだ満開の宴たけなわの様相を呈していた。スムーズな車の流れのおかげで勝沼インターまで2時間もかからなかったので、そこで高速を降りるとフルーツラインと呼ばれる果樹園を抜ける山間道を勝沼ぶどう郷駅を目指すことにした。

甚六桜と命名されたJR勝沼ぶどう郷駅周辺に植えらえた約千本の桜が満開を迎えていたので早速花見の宴に加わらせていただいた。旧勝沼駅はスイッチバック式であったため、駅構内の線路の延長が約2kmと長く、北側の塩山駅寄りに残る折り返し線の敷地にたくさんの桜が植えられ、みごとな桜の回廊を現出させている。さすがに駅周辺での桜の見どころとあって高級カメラを抱えた撮り鉄が多く参集しており、電車が来るたびに一斉にシャッター音を響かせていたのだった。

勝沼ぶどう郷駅周辺は桃源郷のテリトリーであり、すでに桃の花の鮮やかなピンクに心が躍っていたのだが、夕暮れが迫っていたので今日の宿泊地である甲州塩山温泉宏池荘に引きこもり、開湯約650年の由緒ある温泉と名物馬刺しを堪能しながらバトミントンの桃田選手に寛大な措置が下るよう桃太郎侍に扮する高橋英樹に祈っておいた。

4月10日(日)
塩山温泉を少し北上した丘陵地は髙橋真梨子よろしく桃色吐息に包まれており、農家の人々は夏場においしい桃が収穫出来るように桃の花の間引きに余念がないようであった。

さらに北上すると山梨県指定天然記念物の慈雲寺のイトザクラがそのしなやかな枝ぶりで手招きしていたので見物させていただくことにした。すだれのように垂れ下がった枝にはすでに葉っぱが多くみられるものの、ピンクのカーテンはいまだ健在で観光客も撮影用の脚立によじ登ってその雄姿をフラッシュメモリーに収めていた。

慈雲寺の周辺には農家の方々が出店を出しており、地域特産物が言い値で売られているのだが、この機をとらえて試食させていただいた桃のジャムと桃の木を焼いて作った大量の炭を安値で購入させていただいた。

さすがに日本一だけに桃源郷のエリアも広大で中央道を挟んで北と南の斜面がピンクに染まっているのだが、中央道の釈迦堂PA周辺が見どころの一つとなっているので駐車場の行列に並ぶことにした。釈迦堂PAは階段で外界とつながっており、釈迦堂遺跡博物館の周辺が色とりどりの桃の花の展示会場の様相を呈している。ここでは桃の枝\200程度で購入出来るので桃の花の虜になった観光客がこぞって良い枝を選んでいた。

満開になった桃の花も太刀打ちできないほどの威厳と格式のある名木が北杜市武川町で悠久の時を刻んでいるとの情報を入手していたので釈迦堂を出てシャカシャカと中央道を北に向かった。南アルプスを背景にしたその地に到着すると「神代桜」というのぼりを数多く目にするようになる。臨時的に設えられたはずの駐車場に車を止めると実相寺という寺の境内に恭しく立ち入ることにした。

数ある桜の木の中でひときわ異彩を放つ老木は何本もの杖で支えられ、肘にはサポーターを巻かれながらも生命力で溢れていた。山高神代桜は新日本名木百選・日本三大桜に選定されている国指定天然記念物のエドヒガンザクラである。その起源は日本武尊が東方遠征の際にこの地を訪れ、記念に植樹したと伝えられており、樹齢は2000年を誇っているとのことである。しかし、約10年前にこの木を見に来た時の樹齢も2000年で10年後に樹齢が2010年になっていないところを見ると植物の樹齢は大胆な四捨五入により計算されていることがうかがい知れるのである。

また、境内に神代桜の宇宙桜なるものが生えているのだが、これは地元の武川小学校の児童が採取した神代桜の種をスペースシャトルで宇宙遊泳させてほしいとせがまれた若田光一宇宙飛行士が「若っ田!」と言って宇宙ステーションに持ち込み、約8ヶ月間無重力状態で放置した後、地球に帰還して発芽したマサに宇宙木なのである。

実相寺近辺の杉林に天空を目指す桜の木を見上げて首のストレッチをした後、韮崎市のわに塚の桜を見て花見をしめることにした。この木は神代桜に及ばないものの300年の樹齢を誇るエドヒガンザクラであり、クロコダイルのような獰猛な枝ぶりが印象的であったのだった。

FTBサマリー
総宿泊費 \18,000(2食付き、2人分)
総高速代 \5,120
総ガソリン代 \3,919

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