NHK、BSプレミアムのドキュメンタリー番組である「世界ネコ歩き」が始まるとテレビ画面に釘付けになるボンよ!
内弁慶な君たちは動物病院に搬送される以外は大半の時間を家でゴロゴロして過ごすのが日課であるが、FTBを率いているボス猫の私は「世界ネコ歩き」を体現しなければならないという使命を帯びているので今回は忙しい合間を縫って南海の楽園タヒチに肉球跡を残すツアーを開催することとなったのだ。
2018年8月13日(月)
ニュージーランド航空運行の午後10時5分発NZ92便は定刻に羽田空港を離陸した。すでにANAのSuite Loungeにてたらふく飲み食いして睡眠体制を整えていたので機内ではひたすら覚醒レベルが上昇しないように注意を払って過ごしていた。
8月14日(火)
約10時間半のフライトでニュージーランドの玄関であるオークランド国際空港に到着したのは正午前であり、日本よりすでに時計の針が3時間進んでいたのであった。入国、税関をつつがなく通過したものの1歩外へ踏み出すと真冬のニュージーランドの外気温13℃の南風がみるみる活動する気力を失わせたために路線バスで空港近辺のHoliday INNに移動し、IHGポイントを使ってただで泊ったにもかかわらずアップグレードしていただいたスイートルームに引き篭もって悠々自適なホテルライフをエンジョイさせていただいた。
8月15日(水)
南太平洋の優等国で南太平洋路線が充実しているニュージーランド航空が運航する午前9時10分発NZ40便オークランド発パペーテ行きは定刻に出発した。約5時間弱もの時間を機内で過ごして意識が朦朧としてついつい「ふぁ~~」とあくびが出た頃合にフランス領ポリネシアタヒチ島のファアア国際空港に到着したのだが、まるでタイムマシンでやって来たかのように日付は前日の8月14日に舞い戻っていたのであった。
8月14日(火)
午後4時過ぎに疲れ果てたようにたらたらとタラップを降り、空港の建物に入った瞬間にタヒチアン・ミュージックとダンスの歓迎を受け、みるみる体中に生気が蘇って来る感覚を覚えた。
簡単な入国審査を経てフランス領ポリネシアへの入国を果たし、手持ちの米ドルをいくらかのフレンチ・パシフィック・フランに両替するとタクシーを捕まえて今日の宿泊先へと急いだ。尚、タヒチでの金銭感覚だが、フレンチ・パシフィック・フラン (CFP)と日本円の換算がおよそ1対1なので¥1,000を使う感覚でCFP1,000を浪費することが出来るのだ。IHGポイントが余っていたので、私はただで宿泊出来るタヒチ島随一の高級ホテルであるインターコンチネンタル・タヒチ・リゾート&スパに颯爽とチェックインすると上半身裸の屈強なタヒチアン優男が部屋まで荷物を運んでくるシステムになっていたのだが、FTBが通常提供している高額チップを渡そうとしても優男のパンツにポケットがないことを考慮して断念せざるを得なかったのだった。
部屋に入って程なくするとあたりも暗くなってきたので、浮かせたチップ代をホテルに還元するために高級ディナーと洒落込むことにした。アポなしでホテルの水上レストランであるフランス料理の「ル・ロータス」にアタックすると首尾よく30分後にテーブルを確保することが出来たので今夜はここで散財してIHGポイントを稼ぐことにした。
フロントでウエルカムドリンクのチケットをいただいており、ビール、カクテル、スパークリングワイン等を発注出来ると書いていたので、テーブルに着いた矢先にスパークリングワインを頼んだのだが、高級フレンチのプライドを覗かせたウエイターからシャンパンならあると言われたのでまがいもののスパークリングを口に出したことを後悔しながら最初のドリンクに口を付けた。料理はアラカルトで魚系とデザートを発注したのだが、世界の渡部ほどの食通でない私でも十分アンジャッシュな気分を満喫することが出来たのであった。
8月15日(水)
IHGインターコンチネンタルホテルズグループと深いつながりを持つANAの策略により、IHGの最上位ステータスであるスパイアエリートに出世させられていたFTBはLateチェックアウトの特典を利用して昼ごろまでの滞在を決め込んでいたので早朝からじっくりとリゾート内のファシリティの調査に時間を費やすことが出来た。
レガッタ系のボートを力強く漕いでいる原住民の背景には近隣の島であるモーレア島のシルエットが浮かんでおり、青い南国の海をじっと見て佇んでいるだけで十分リゾート気分が盛り上がってくるのだが、、リゾート内にはご丁寧に亀を飼育するにごり池や外海と隔絶された巨大プール型いけすが設えられており、サンゴ礁の回りでカラフルな熱帯魚がWINKする観光客を尻目に♪ゆらゆらSwiming♪とマイペースで泳いでいた。
リッチなリゾーター向けには海の上の立地のよい場所にタヒチ名物水上バンガローが数多く用意されているのだが、スパイアエリートと言えどもそこまでのアップグレードはなし得なかったので水上部屋内の便所やバスタブの排水系とサンゴ礁きらめく海の環境とのバランスがどうなっているのかの解明には至らなかったのだ。
アイスクリームや菓子類、香水等に欠かせないバニラはフレンチポリネシアンの名産品となっているのだが、インターコンチネンタルの敷地内にもプロモーション用のバニラの木が囲いの中に数本植えられている。バニラはラン科の植物で湿気の多い場所に添え木となる軸木を植え、その湿った根元にバニラの若枝を挿し木にして栽培している。尚、ポリネシアにはハチがいないので受粉の役割は人力に頼っているそうである。
正午過ぎにホテルをチェックアウトするとチャーターしていたタクシーに乗り込み、パペーテ中心部のモーレア島行きフェリー乗り場に向かった。重厚な門構えのフェリー乗り場で下車し、チケット売り場を探していたのだが、何故か人影が少ないようであった。ようやく見つけた係りのおばちゃんから状況を聞いたところ、この日は「聖母被昇天祭」という祭日でフェリーの運行本数が少なくなっており、市内の商店街もほとんどシャットダウンしているとのことだったので思わずショックで昇天しそうになってしまった。
首尾よくフェリー乗り場近辺のうらぶれたバーが店を開けているようだったので熱中症で昇天する前に水分補給することにした。吉川と名乗る日本人がオーナーかどうかは定かではないのだが、タヒチのローカルビールはHINANOビールが定番になっているのでタヒチ語で「かわいい女の子」を意味する黄金の液体を味わいつくして時間を稼いでいた。
午後2時を過ぎたあたりからフェリー乗り場周辺が観光客でざわつき始め、テレパウというフェリー会社のチケット売り場で首尾よくチケットを入手すると高速船はようやく3時過ぎに出港となったのだった。モーレア島へはわずか30分の船旅でデッキで潮風に吹かれているとモーレア島の荒々しい島影がみるみる近づいてきたのであった。モーレア島には公共交通機関がないのでホテルまでの遠い道のりをタクシーに揺られていくことになるのだが、タクシー乗り場で出会った推定85歳以上のエリザベスと名乗る運転手は果敢にも重いスーツケースをトランクに抱え上げ、道中はモーレア島のガイドまでかましてくれたのだ。モーレアしまんちゅのプライドを会話のここかしこに織り交ぜるエリザベスによるとモーレア島では週5回ゴミの収集が行われ、島は至って清潔に保たれているとのことで、タヒチで一番人気のボラボラ島ではぼられるとは言っていなかったが、ボラボラ島よりモーレア島の方がすばらしいことは十分に脳内に刷り込まれていったのだった。
待望のインターコンチネンタル・モーレアリゾート&スパにチェックインを果たすとスパイアエリートのFTBにアップグレードしてあてがわれた部屋は藁の屋根をかぶったガーデン・バンガローであった。驚いたことに部屋のデッキには源水?垂れ流しのプライベートプールが装備されており、これからビーチで付着するであろう塩分をこんこんと流れ出る真水で清める体制が整えられていた。
たそがれ時に広大なリゾートの敷地を散策していると離れの水上バンガロー地区で沈み行く太陽を背景に手招きしている猫科のシルエットが視界に入ってきた。思いもよらぬ場所での「世界ネコ歩き」となってしまったのだが、南国の離島にひっそりと暮らすネコに対して「マサにネコ歩きに国境などないのだよ」と語りかけていた。
8月16日(木)
リゾート滞在での最大の贅沢は何もしないことなので、今回は特に島内を散策することもなく、ひたすらリゾート内で静かに過ごすことにした。かつて画家ゴーギャンはこの島を「古城のようだ」と評しており、海底火山の大噴火で生まれた大自然の起伏ある景観をくまなく見て回るのは予定のされていない次回滞在時に譲ることにした。
レストランで朝食のビュッフェを高値の支払いで食しているときに足元に放し飼いのヒヨコがまとわり着いてきた。このホテルではシーフードだけでなく、卵料理や鶏肉料理のメニューも充実しているのだが、ヒヨコたちも近い将来スクランブルエッグやチキンソテーとして貢献することが約束されているはずだと思いながら朝食を値段負けしないように無理して胃に詰め込んでいた。
リゾート内の船着場から鳥の目線で青い海を眺めていると丁度パラセイリングのボートが出航するところであった。マリンアクティビティはひととおりそろっており、スノーケリングセットは無償で貸与していただけるのでマスクとフィンを小脇に抱えてビーチ沿いをうろうろしていた。
ラグーンではビートの利いた音楽に乗って水中ビクスに興じているリゾーターがいる一方で、ドルフィン・エクスカーションなるイルカと人との触れ合いが出来るプログラムも高値で用意されており、トレーナーの指示で魚目当てで従順になったふりをしているイルカを手篭めにすることも出来るのである。
スノーケリングは基本的にどこでやっても自己責任でOKなのだが、水上バンガローの宿泊客は部屋から出れば即海中世界となっている。海の中を覗いてみると魚が密集しているエリアはあるものの環礁地帯になっていない所を泳ぐと普通の海水浴に成り下がってしまうのであった。
敷地内には海亀保護センターもあり、生まれたばかりの小亀から干からびた甲羅で命からがら生きながらえているような老海亀も平和に暮らしているのだが、果たして小亀たちはいつ大海原への航海に繰り出すことが出来るのであろうか?
定番の「世界ネコ歩き」の時間になったので昨日出会った場所を訪れると今日はよりフレンドリーになっていたので涙なしに別れの時を迎えることが出来るのか心配になってきたのであった。
8月17日(金)
リゾートでやり残したことを数えればきりがないのだが、滞在中に運動不足に陥っていることを鑑みてカヌーを漕いで海に出ることにした。カヌーは2人乗りのタンデム仕様のものと立ち漕ぎで「レレレのおじさん」のポーズで前進するタイプのものがあるのだが、ギタリストのようなポーズが決められなかったのでちまちまと2人乗りを漕ぎながら浅瀬での座礁を繰り返していた。
ドルフィン・エクスカーションは相変わらず活況を呈しているのだが、施設の近辺には珊瑚の養殖だなも見られ、豊かな南国の海でも珊瑚の白化現象は刻々と進んでいる状況に脅威を覚えていた。
2泊させていただき、社会復帰が心配になるほどのくつろぎを堪能したインターコンチネンタル・モーレアリゾート&スパを後にするとタクシーでフェリー乗り場に帰っていった。フェリーの到着時間が近づいた頃、ふとタクシー乗り場に目をやると島を愛する勤勉なエリザベスは今日も客待ちに余念がないようであった。
タヒチ島に戻るとタクシーでインターコンチネンタル・タヒチリゾート&スパへと急ぎ、チェックインすると何故か前回宿泊した部屋の隣の部屋があてがわれていた。どうしても居心地最高だったモーレア島のインターコンチとの比較になってしまうのだが、ホテル代はタヒチ島の方が高いとはいえ、室内にはプライベートプールどころかバスタブさえなかったので太平洋フロントのプールで夕暮れまでのひと時を楽しむことにした。
プール型巨大いけすに場所を移して見るとすね毛を餌と間違えた熱帯魚が早速群がってきやがった。人口ものの設備とは言え、間近で感じる熱帯魚の感触は格別であり、カラオケで♪淋しい熱帯魚♪しか歌えないような仕事で疲れた病んだ心もここに入れば一気に晴れ上がっていくのである。
モーレア島をオレンジに染める夕日を見送るとリゾートにつかの間の静寂が訪れる。
週末のこの日に静寂を打ち破るのはティアレ・レストランで行われる島内随一の本格的タヒチアン・ダンス・ショーである。あらかじめ7時半に予約しておいたので舞台近くのかぶりつき席に陣取るとまずは地元料理のビュッフェで腹ごしらえをして、タヒチでNo.1の実力を誇るダンスグループ「ヘイタヒチ」のメンバーが登場するのを今か今かと待ちかまえていた。
8時過ぎに念願の開演となると会場は一気に盛り上がり、BEGINを髣髴とさせるバックバンドが奏でる独特なリズムにより伝統的なポリネシアンの雰囲気に包まれていった。
演目は少年が火のついたバトンをグルグル回しにするお決まりのものや、伝統的打楽器に合わせて踊る「オテア」、手の動きで物語を表現する「アパリマ」、男女が輪になって踊る「ヒヴィナウ」等であるが、松雪泰子や蒼井優が「フラガール」で披露した膝折り仰向け寝の状態から徐々に上体を起き上がらせる技は実演されなかったのだ。
ダンス・ショーも佳境を迎えたところで観客参加型のプログラムに移行し、各ダンサーは舞台に上げるべきスターを物色するために客席中を目を血眼にして歩いていた。たまたま赤シャツを着ていた私はドラフト1位で指名されてしまったのだが、ここでダンスチームへの入団を拒否するわけにもいかない雰囲気になっていたので契約金なしで堂々とデビューを飾ることにした。
観客の大歓声を浴びて切れのあるステップを披露した後は記念写真撮影大会となった。顔の小さい私よりもさらに一回り顔の小さいセンターダンサーと無事にツーショットが決まるとほどなくしてダンスショーはお開きとなったのであった。
8月18日(土)
夢のようなひとときを過ごしたインターコンチを早朝チェックアウトするとタクシーに乗り、「ふぁぁ~」とあくびをしながらファアア国際空港に向かった。Air TahitiNuiが運行するTN101便は定刻9時5分に出発すると6時間弱もの時間を機内でやり過ごさなければならなかった。
8月19日(日)
日付変更線を越えるといつのまにか日にちが進み、オークランド国際空港に到着した時間は午後1時過ぎとなっていた。空港からSky Busに乗り込むと約40分でオークランドの市街地に到着し、Crown Plaza Aucklandにチェックインを果たすと窓越しにスカイツリー系のタワーのフォルムが目に突き刺さった。スカイタワーと名乗るこの建造物は高さ328mの南半球で最も高いタワーであり、オークランドの観光名所となっている。なるほど、安全ロープに身を委ねた観光客がアウトドア高所スカイタワーめぐりを楽しんでいる様子で遠めにもその緊張感がひしひしと伝わってきたのであった。
明るいうちにオークランドハーバー近辺をうろうろしていたのだが、一等地に店を構えているOK GIFT SHOPは日本人の店員を多数配置しているにもかかわらず適正価格で土産物を販売しているようであった。
夕食はカニをメインにふるまうカジュアルなレストランで取ることにしたのだが、あえて時価のカニの姿ものは発注せずにカニの身が少し入ったサラダやシーフードチャウダー等でコストを抑え、タヒチで緩んだ財布の紐の修復を図っていた。
8月20日(月)
ニュージーランドドル札が少し余っていたので昨夜OK GIFT SHOPで買わなかったマヌカハニーを空港の免税店で購入し、午前8時55分発NZ99便で成田への帰路に着いた。午後5時過ぎに成田に到着すると殺菌作用の強いマヌカハニーで今年の冬も喉を消毒し、インフルエンザワクチンを接種することなく冬を乗り越えようと考えながら流れ解散。
FTBサマリー
総飛行機代 ¥159,780
総宿泊費 CFP114,711、NZ$176.4
総タクシー代 CFP16,900
総フェリー代 CFP2,320
総バス代 NZ$36
協力 ニュージーランド航空、Air TahitiNui、IHG