第三回ガリンコ号で行くガチンコ流氷ながれ旅ツアー(やらせなし)

今冬、度重なる爆弾低気圧による暴風雪に見舞われた道東はホワイトアウトで目の前が真っ白になった陸地とは対照的にオホーツク海を埋め尽くす白い氷は例年より少なめだと言われている。日々更新される流氷情報を注視しながら、今年も流氷が着岸するタイミングを見計らってながれ旅ツアーが開催される運びとなったのだ。

3月7日(土)
ANAの株主優待券が余っていたのでマサであれば\50,290かかるところを私は半額の\25,290で購入した10:30発ANA375便に乗り込むと低気圧に乗って北へと向かって行った。流氷の街として名高いオホーツク紋別空港に定刻より早い正午過ぎに到着すると早速ニッポンレンタカーで雪国仕様のホンダのフィットをレンタルすると一路流氷砕氷船ガリンコ号ターミナルを目指した。

チケット売り場でガリンコ号の乗船券とオホーツクタワーの入場券がセットになったお得なチケットを\3,500で購入するとご当地昆布で出汁が取られているはずの海鮮ラーメンをすすって体をほぐしておいた。今日の紋別港は見事な流氷で埋め尽くされており、頼りなく停泊している船舶もその圧力にだまって耐えているようであった。

13:30発第4便の出港を迎える時間になるとロープで仕切られた乗船エリアには大挙して押し寄せてきた団体観光客により長蛇の列が出来ていた。乗船が開始されるや否や皆我先にとベストポジションを巡っての争奪戦が繰り広げられたのだが、FTBは何とかデッキ左舷最前部のベストポジションを確保することに成功した。

三井造船が総力を挙げて建造した砕氷船はすでに二代目となっており、ガリンコ号IIとして日々そのポテンシャルをいかんなく発揮しているのだが、その最大の特徴は、「ネジを廻すと前に進む」というアルキメデスのねじの原理を利用した「アルキメディアン・スクリュー」と呼ばれる螺旋型のドリルを船体前部に装備していて、それを回転させ氷に乗り上げ、船体重量を加えて氷を割ることで流氷域の航行ができることである。

ガリンコ号IIが氷で埋め尽くされた港内から脱出すると、外洋は白い流氷帯と青海とのコントラストが美しく、オホーツク海に見事な氷平線が形成されていた。船長はガリンコ号IIのポテンシャルを誇示するために巨大な流氷を見繕ってガリンコドリルと流氷とのガチンコ勝負を演出し、乗客の喝采を浴びていたのであった。

体が芯から冷え切った頃を見計らってキャビンにエスケープしたのだが、窓越しから間近に見る流氷群も迫力があり、1時間の乗船時間に寒暖のメリハリも付けて流氷見物に勤しむことが出来たのだった。

流氷とのガチンコ勝負を終え下船すると送迎の電気自動車が待ち構えていたので、しびれるような感動を胸にオホーツクタワーまで移動することにした。氷海展望塔オホーツクタワーは地上3階、地下1階から成るファシリティで、アクアゲイトホールとよばれる地下1階では窓越しに多くの魚介類を育む栄養満点のプランクトングリーンの海の様子を見ることが出来る。水槽には不細工系の魚も飼育されているのだが、最も印象的なのは暗闇に浮かぶ天使「クリオネ」の雄姿であろう。

地上レベルの展示スペースはオホーツクの不思議を解明する展示物が満載で、最上階のパノラマビューからは流氷を切り裂いて航行するガリンコ号の雄姿を遠巻きに眺めることが出来るのだ。

ガリンコ号での身を削るような体験を土産に紋別に別れを告げ、オホーツク沿岸を南東に向けてひた走り、今日の宿泊地である番外地に向かった。わかさぎ釣りの名所である網走湖畔に佇む網走観光ホテルに到着した頃には日もとっぷり暮れていたので、春節で大挙して押し寄せたはずの中国人観光客の残像がすっかり排除された温泉で疲れを取り、ご当地の発泡酒「流氷ドラフト」で喉をゴシゴシしながらブルーな気分に浸っていた。

3月8日(日)
食事にわかさぎが出なかったが、そのせいで評価を貶めることがないはずの網走観光ホテルを後にして、道の駅「流氷街道」に向かった。早速、網走流氷観光砕氷船おーろらの受付カウンターにかけつけたのだが、案内板には「流氷なし」という非情な通知が掲げられており、押し寄せる観光客はすべて鈍氷で後頭部をたたかれたような強いショックを受けている様子であった。

昨日のガリンコ号でのガチンコ体験で気をよくしている私は、すぐに気持ちを切り替えてしれっと知床方面まで足を伸ばす決断を下した。。気まぐれな流氷は知床半島からも撤退している様子でウトロの漁港にもひとかけらの氷も浮かんでなかったのでゴジラ岩を参拝して撤収を決め込んだ。帰りに知床八景のオシンコシンの滝に寄ったのだが、特にコチンコチンに凍っているわけでもなかったので軽く見過ごして次への目的地へと急いだ。

特別天然記念物のタンチョウを見るために釧路方面に車を走らせたのだが、あらかじめ白い鳥に慣れておくために屈斜路湖の砂湯に立ち寄った。凍結している屈斜路湖であるが、砂を掘ると温泉が湧き出る砂湯地帯だけは氷の支配下におかれていないため、多くの白鳥の楽園と化しているのである。

砂湯近辺のスキー場がチャイコフスキー場であるかどうかを確認する暇もなく、白鳥の湖を後にするとフィットのアクセルをさらに踏みしめて釧路市の鶴居村への道を急いだ。鶴居村中心部の鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリに到着すると決定的瞬間を待ち構えている写真家達の前で気ままに餌をついばんでいるタンチョウのグループが目に止まった。

今日は残念ながら、求愛ダンスや餌の取り合いといったアクティブな動きは見られず単調な光景だったが、それでも優雅なタンチョウの雄姿は見る者を十分に虜にする魅力をたたえていた。

さらに車を走らせて中国人観光バスも多く立ち寄る鶴見台でタンチョウの観察をさせていただいたのだが、ここではタンチョウと白鳥が仲良く餌を分け合っていたのだった。

霧も濃くなり、飛行機の発着が怪しくなった釧路空港で車を返却し、天候調査の動向に注意しながら海鮮三色丼を流し込んでいると何とか飛行機は運行可能になったのでANAとAIRDOのコードシェア便であるANA4774便の翼で東京に向けて飛び立っていった。

FTBサマリー
総飛行機代 \45,680
総宿泊費 \12,320
総レンタカー代 \14,904
総ガソリン代 \2,619

協力 ANA、AIR DO、ニッポンレンタカー、楽天トラベル、第一管区海上保安本部海氷情報センター

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