ボンよ、君たちは奈良には世界遺産に登録されていないが、一生に一度は訪問する価値のある古刹が数多く存在することを知っているか!?
ということで、君たちがちょっかいを出している隙間をぬってちょっくらいにしえの奈良まで行ってくることにした。
4月21日(土)
午前10時発ANA019便は羽田空港の混雑により出発が遅れたものの11時半前には新装成った大阪国際空港に到着した。空港の中央に移設された到着ターミナルビルは飲食店の宝庫となっており、丁度昼飯時を迎えたので滑走路ビューのレストランに陣取り、きちんと料理されたチキン定食を食していた。
正午を過ぎて空港のInfomationカウンターに併設されているレンタカーカウンターからニッポンレンタカーの送迎を呼び出したのだが、中々電話が通じない様子で空港はリニューアルしたが、周辺サービスのレベルは落ちたのではないかと懸念しながら到着に時間を要した送迎車に乗り込んだ。軽自動車のダイハツムーブをレンタルすると大阪空港インターから高速に乗り、一気に天理方面まで走っていった。♪うだだ~うだだ~うだうだだ~♪というリズムが頭の中を駆け巡り始めた頃、先人たちが愛した桃源郷を引き継いでいる宇陀市に入ったことに気づかされ、ほどなくすると新緑がまぶしい室生寺の駐車場に到着となったので¥500の駐車場代を支払って参道へと歩を進めた。
この時期にしては気温の高いはずの室生寺周辺は湧き水で潤っているようだったので参拝の前に喫茶「むろう」に立ち寄り湧き水で抽出したアイスコーヒーで体温調整を行い、万全の体制で女人高野室生寺(¥600、JAF割引あり)の門をくぐった。
門番である赤鬼、青鬼が発する氷室京介のような眼光の洗礼を浴び、虚無僧が奏でる尺八から満開のシャクナゲに彩られた寺院内はこれから込むそうだという暗示を受けたので足早に階段を上って中腹の伽藍へ向かった。「威厳」「警戒」「危険」「荘厳」というシャクナゲの花言葉を体現している室生寺ではマムシの出現に注意しながら急な階段を上り下りしなければならないにもかかわらず、多くの老人たちが杖を片手に青息吐息を漏らしながらも信仰心に後押しされて歩を進めていた。
奈良時代末期に建立された室生寺の魅力は、独特の古い文化遺産だけでなく、自然と調和して四季おりおりにうつろう伽藍のたたずまいの美しさである。国宝に指定されている金堂や灌頂堂(本堂)の中には本尊如意輪観音菩薩像をはじめとする数多くの仏像が安置されており、その表情は室井滋のような細面のものからむろつよしの丸顔等さまざまであるが、残念なことに写真撮影は土門拳をはじめとする一流の写真家以外には許可されていないのだった。
シャクナゲに彩られた急な階段の上に東京スカイツリーとは対極をなすはずの総高16.1mのかわいい塔がそびえている。平安時代初期に建立されたこの五重塔(国宝)は屋外に建つ五重塔では最小のもので室生寺のシンボルとして圧倒的な存在感を放っていた。
一般人は通常五重塔を拝見すれば満足して帰って行くかもしれないのだが、さらに長くて急な階段を登った高台にある奥の院までたどり着かないと真言密教のご利益が得られないはずなのでパワースポットとはパワーを消費する場所だとの認識をあらたにして頂上決戦に挑むことにした。原生林に囲まれた奥の院 御影堂(重文)は鎌倉時代の建造物で方三間の単層宝形造、厚板段葺で頂上に石造りの露盤が置かれているめずらしいものであるのだが、拝観終了時間より随分前に堂の扉が閉められてしまったので最後の力を振り絞って登って来た観光客夫婦の円満でない空気を引きずりながらの下山となってしまった。
マイルドな太もものプルプル感と膝の微笑を土産に室生寺を後にすると室生寺・長谷寺春の臨時バスの運行を横目に車に戻り、今旅の次の目的地である長谷寺方面に向かった。長谷寺まで徒歩5分創業150年の天然湯宿である湯元井谷屋に投宿すると早速地下600mより噴出する奈良では珍しい天然温泉に身を委ね、湯上りの体のポカポカ感のはんぱなさにおそれおののきながら奈良の御所で特別に飼育された希少な奈良ブランド合鴨肉「倭かも」鍋を部屋食で堪能させていただいたのだ。
4月22日(日)
長谷寺での最大のアクティビティは午前6時半から始まる朝の勤行である。奈良が誇るスーパースター「せんとくん」を輩出した平城遷都1300年祭を契機に1000年以上絶え間なく続く「祈り」に出会うことが出来る悠久の扉が開かれたはずであったのだが、今回は勤行に参加するチャンスを逸してしまっていたのである。
午前10時前に井谷屋をチェックアウトすると牡丹祭りで賑わいを見せている西国八番大和国長谷寺に馳せ参じた。早速案内所で入山料、特別拝観料および大観音大画軸大開帳拝観料金、合計¥1,800を奉納すると満開になった色とりどりの牡丹の花々を横目に三百九十九段の登廊に挑んだ。
登廊の中腹に月輪院という建物があり、喫茶店のような役割を果たしていたのでここでお茶とソフトクリームをいただいた。店員はすべて修行僧でまかなわれているのだが、発注ミスが発覚したときに何故か「オーマイゴッド!」とつぶやいていた様子で、これぞマサに神仏習合の真髄ではないかと感心させられたのだ。
栄養補給がすんだので体内のボタンを押してスイッチを入れ直すと一気に山の上に駆け上がった。国宝に指定されている本堂には清水寺に匹敵する見事な舞台が設えられており、美しい山寺の景色を眺めながらここで今朝行われたはずの長谷寺の勤行に思いを馳せていた。
長谷寺観音として有名なご本尊は国指定重要文化財に指定されている十一面観世音菩薩立像で室町時代の1538年に再造され、その像高は1018cmを誇っている。本堂の中に立っているご本尊の足元に膝まづき、足元に撫でしがみつくと願いがかなうといわれているのでご本尊の足の甲は常にピカピカに輝いているのだ。
多くの参拝客で賑わう長谷寺の秩序を守るために番犬に重要な任務が与えられているはずであるのだが、無心で横たわりながら修行しているようなので決して手を出してはならないと釘をさされてしまった。正午の時を告げる鐘の音とともに僧侶がその肺活量を誇示するかのように法螺貝を吹いていた。一般人が法螺を吹くのとは次元の違う音色にしばし耳を傾けながらいにしえの奈良時代から連綿と受け継がれる歴史と伝統に思いを馳せていた。
長谷寺の五重塔は室生寺のものと比べてやや大ぶりであるが、昭和29年、戦後日本に初めて建てられたことから昭和の名塔と呼ばれている。その近くには三重塔の石碑とともに桜の木が植えられており、元々の塔は三重県人が誇りとするはずの三重であったことが伺い知れるのである。
本坊大講堂において西国三十三所草創1300年長谷寺記念事業として大観音大画軸大開帳(¥500)が開催されているのでこの機会に拝ませていただくことにした。室町時代に製作されたこの御影は本尊十一面観音菩薩立像を原寸大に画いたもので、室町時代・明応四年(1495年)に羅災した本尊の復興の為に、興福寺の南都絵師法眼清賢が高野紙430枚を継いで設計図として画かれたことに由来するそうだ。その寸法は縦16m以上、横6m以上で重量は125kgにもおよんでおり、特定場所から写真撮影が許可されているのだが、到底全景をフレームに収めることが出来ず、神聖なお顔が写真に写らないように見事に配置されているのであった。
FTBサマリー
総飛行機代 ¥24,580
総宿泊費 ¥30,240(二食付き)
総レンタカー代 ¥9,580
総高速代 ¥3,270
総ガソリン代 ¥1,019
協力 ANA、楽天トラベル、ニッポンレンタカー