東京の桜を堪能した後、桜前線を追ってみちのくを旅することが多くなった近年であるが、雪深い長い冬を越えて凛と咲くその姿は首都圏の桜の名所とは趣の異なる風情を感じさせる。今年のみちのく桜祭りの名所巡りは恒例の小京都のみならず、神々しい一本桜や大河の傍らに延びる桜並木まで足を伸ばすこととなったのだ。
2016年4月23日(土)
午前9時55分発ANA403便は定刻通りに出発し、1時間弱のフライトで秋田空港に到着した。ニッポンレンタカーで燃費のデータを改ざんしていないはずのダイハツ軽自動車ムーブをレンタルすると早速みちのく三大桜の名所のひとつである角館に向かった。
みちのく小京都の角館の平成28年度の桜祭りは4月20日から開催されており、土曜日の今日は大変な賑わいを見せていた。角館駅前の臨時駐車場に\1000を奉納してムーブを預け、名物稲庭うどんの喉越しで腹ごしらえを済ませると江戸時代の雰囲気を今に伝える武家屋敷通りに向かった。
1656年に京都から持ち込まれて植え継がれた枝垂桜は満開となっており、通りの両側に続く昔ながらの黒板塀と、屋敷から垂れ下がる薄紅色の花びらが見事な調和を成している。秋田犬の忠犬武家丸も上機嫌で観光客を迎えており、通りを巡る人力車とともに重要な観光大使の役割を見事に果たしているのだった。
武家屋敷通りにはいくつかの見学可能な家屋があるのだが、その中で最も代表的な青柳家に入場料¥500を支払ってお邪魔させていただくことにした。約三千坪の敷地内は植物園のように草木に覆われ、その中に「武器蔵」「青柳庵」「郷土館」「武器道具館」「幕末写真館」「ハイカラ館」の6つの資料館が歴史の遺物を展示しているのでくまなく見て回ることにした。
武器道具館ではSサイズの甲冑の展示とともに実際に太刀やなぎなたを手にしてその重みを感じることが出来、当時の武士は体の割には力があったことが伺い知れたのだった。また、ハイカラ館ではエジソンが発明し、ビクターが発展させた蓄音機がその進化の歴史をつづるようにモデルごとに展示されており、エジソンは偉い人であることをいつだって忘れないように配慮されてもいた。
武家屋敷通りの散策後、桧木内川に移動するとそこには満開のソメイヨシノが咲き誇っており、マサに圧巻の景観であった。花見の宴会や桜まつりもたけなわの様子で仮設の舞台では老若男女による民謡の演武が華やかに繰り広げられていた。
歴史と伝統による高い格式を感じさせられた角館を後にして仙北市を北上し、雪まだ残る八幡平温泉郷へとひた走った。もくもくと噴気を上げているその場所がFTBの定宿になっている山間の一軒宿の後生掛温泉である。この温泉はオナメ(妾)、モトメ(本妻)という約90℃の地獄から引く源泉を水で割ったものであるのだが、後生を掛けて地獄に身を投げた女の情念のようにどろどろした泥湯で湯治するのが有名であり、馬で来ても下駄で帰れるほど体が回復すると伝えられているのである。
4月24日(日)
NHK仙台支局が青森弘前公園の桜が満開を迎えていると伝えていたのだが、弘前には去年の桜祭りを堪能させていただいたので今日は八幡平の峠を越えて岩手県に侵入することにした。峠の展望所から周囲を見渡すとあたりは未だに雪景色であり、雪を被った岩手山を目の当たりにして東北の冬の過酷さをあらためて思い知らされた。
日頃より小岩井生乳100%ヨーグルトの売り上げに貢献させていただいている縁もあって、岩手郡雫石町でせっせと乳製品を作っている小岩井農場を訪問した。今回の目的は小岩井農場まきば園ではなく、知る人ぞ知る一本桜を見るために立ち寄った。岩手山を背景に緑の絨毯の上に佇む一本の桜の木は映画のワンシーンのように美しいのだが、このエドヒガンザクラは遅咲きのため、まだつぼみのままであったのだ。
盛岡地方裁判所の敷地内に周囲約21mの巨大花崗岩を裂くように幹を伸ばしている銘木がある。「石割桜」で知られるこのエドヒガンザクラは樹齢350~400年という老木でありながら、現在も年に数ミリメートル単位で岩を割り続けているという執念さえ見せている。これぞマサにどんな逆境にも果敢に立ち向かう東北の象徴のひとつと言えよう。
盛岡から東北道を下った北上川沿いにみちのく三大桜名所のひとつが君臨し、丁度桜祭りが行われている時期だったので会場への渋滞に巻き込まれてみることにした。北上川沿いの293ヘクタールほどの敷地に約150種類およそ1万本の桜が連なり、それは見事な桜のトンネルを形成している場所は「北上展勝地」である。
桜のトンネルはピークを過ぎて葉っぱが多くなっているものの、しだれ桜の一部が丁度見頃を迎えており、観光馬車「よしきり号」で♪ドナドナド~ナ ド~ナ~♪とのんびり高みの見物を決め込んでいる観光客の満足度も高いようであった。
今回みちのく桜ツアーを開催してそれぞれの桜の名所のピークをとらえることの難しさを肝に銘じて秋田空港への帰路についた。空港のレストランで秋田の名物料理を堪能し、午後7時55分発ANA410で初夏間近の東京へと帰って行った。
FTBサマリー
総飛行機代 \37,280
総宿泊費 \27,000(2食付き、2人分)
総レンタカー代 \10,476
総高速代 \3,020
総ガソリン代 \2,629
協力 ANA、ニッポンレンタカー、楽天トラベル