マサよ、君はこきりこの竹は七寸五分であることを小学校の音楽の時間に習ったことがあるか!?
というわけで、年端もいかない頃に身に付いたリズムやメロディーは一生かかっても抜けることがないらしく、今や世界遺産として君臨しているその民謡を生んだ僻地へのツアーがデデレコデンの囃子とともに開催されることとなったのだ。
2015年10月11日(日)
午前9時45分発ANA313便は羽田空港の混雑により、遅れての離陸となったのだが、11時ごろには富山きときと空港に到着した。北陸新幹線の開通により、この空港の利用者が激減したため、対策の一環としてレンタカー各社が呉越同舟となり「富山きときと空港レンタカーキャンペーン」で優良ドライバーを勧誘していたので、ニッポンレンタカーでお得価格のトヨタのヴィッツをレンタルすると早速ギトギトした商魂を振り払うべく越中路へと繰り出した。
目的地を越中・飛騨観光園五箇山総合案内所にセットし、あわよくば正午に開園となる「四季に舞う こきりこ踊り」というイベントに間に合わせようとヴィッツを飛ばしたのだが、思いもかけぬ渋滞に引っかかってしまったため、案内所に着くと即座に昼飯屋探しに切り替えたのだった。
地元の五平餅、五箇山豆腐、そば等で腹を膨らませると降りしきる雨を物ともせず、五箇山の見どころのひとつである世界遺産菅沼合掌造り集落へ向かった。協力金\500を支払って車を駐車すると山あいを流れる庄川のわずかな河岸段丘にある9戸の合掌造り家屋が待つ集落へと足を踏み入れた。
現存する家屋は100?~200年前のもので江戸時代に建立され、日本有数の豪雪地帯の中で長年の風雪に耐えてきた威厳を湛えている。
集落内には土産物屋はもちろんのこと、五箇山の歴史と伝統を体験できる五箇山民俗館や塩硝の館(共通券\300)があり、当時の生活様式や合理的な農機具、主要産業などを垣間見ることが出来るのだ。尚、塩硝とは火縄銃で使われていた火薬のことで原料を囲炉裏端の地下に埋めて5年間熟成させねばならぬという非常に根気のいる産物なのである。
すがすがしい気分で菅沼集落を後にすると五箇山総合案内所を起点としたいくつかの見どころを巡ってみることにした。庄川を取り巻くブナ林を横目に加賀藩流刑小屋の看板を頼りに橋を渡ると小じんまりした掘っ建て系の小屋が見えてきた。五箇山地方の東岸は、庄川の断崖絶壁に隔離され、加賀藩では流刑の好適地として多くの流刑人が送り込まれたという。真っ暗な小屋の中をフラッシュ撮影すると流刑人形がうやうやしく正座して反省している様子が写りこんだのだった。
総合案内所の国道沿いの並びにひときわ大きな合掌造りの住居が君臨している。国指定重要文化財の村上家(\300)は約400年前の建築当時の様式を伝える貴重な家屋で、内部には江戸時代に五箇山の主産業といわれた塩硝製造や和紙製造等の民族資料数千点を陳列しており、五箇山の生活史を垣間見ることが出来る。さらに、当主が囲炉裏を囲みながらこの家やこの地域にまつわるお話をしてくれて、最後にはこきりこ節を歌ってその美声まで披露してくれたのだ。
今回の宿泊先である新大牧温泉民宿ながさき家に投宿し、部屋にエアコンがなかったので温泉に入って寒さ対策を施した後、夕食の時間と相成った。食卓を賑わしたものは都心部では決して食すことがかなわない岩魚の刺身や五箇山豆腐等、心と体に優しいはずの地元料理であった。
10月12日(月)
朝起きると昨日の雨とは打って変わって青空が広がっていたので、五箇山のもうひとつの世界遺産である相倉合掌造り集落への観光へと打って出た。この集落には23棟の合掌造り家屋が現存し、田畑、石垣、雪持林とともに懐かしい景観を見せている。
この季節は特に♪うすべにのコスモスが秋の日の何気ない陽だまりに揺れている♪光景が美しく、周囲の里山と合わせてマサに日本の農村の原風景が展開されているのであった。
家屋のいくつかは物干し竿に浴衣たなびく民宿として営業されており、また、旧高桑家と旧水口家では世界遺産登録20周年記念として美術展が開催中で、地元の作家が囲炉裏炭ブラック壁の背景に近代的な絵画等をうまくマッチさせていた。
相倉民俗館・相倉伝統産業館(共通券\350)に立て続けに入館してこの集落の歴史を学習させていただいたのだが、映像のスイッチを入れるとお約束のこきりこ節が流れ、リズムを取る七寸五分の竹や和紙細工で彩られており、やはりこの地はこきりこで成り立っていることをあらためて思い知るに至るのである。
合掌造り集落では火気厳禁の看板とともに熊にも厳重な注意が払われている。五箇山に入った当初から熊料理の看板に目を付けていたので、満を持して入店し、くまつけそば(\1,200)を発注させていただいた。付けダレに入っている肉は熊の味かどうかは定かではなかったが、店主を信頼して美味なそばを浸して完食したのだが、熊顔の店主曰く、最近はくま鍋の人気が拡大し、熊肉の入荷が間に合わないため、自分で仕留める分だけでなく狩人仲間からも仕入れなければならないとのことであった。また、昨年自分で栽培した蕎麦がカモシカに食い荒らされて収穫出来ないという苦い経験を持ち、天然記念物という肩書で守られているカモシカを毛嫌いしているのだ。
熊料理屋でのカモシカ長話で時間を食ってしまったので、帰路に就く傍らの新五箇山温泉ゆ~楽の眺望露天風呂で時間調整して、きっとまた帰ってこなければならないと思いながら富山きときと空港へと車を走らせた。
午後5時40分発のANA320便の搭乗までしばらく時間があったので、富山名物のホタルイカ、白エビ、鱒ずし、氷見うどんがセットになった氷見御前(\2,200)をかきこんで越中からの撤退となったのだった。
FTBサマリー
総飛行機代 \27,980
総レンタカー台 \6,940
総高速代 \1,680
総ガソリン代 \1,439
総宿泊費 \8,500(2食付き)
協力 ANA、ニッポンレンタカー、楽天トラベル