Go To FTB 紅葉を見に行こ~ようツアー奥鬼怒&日光

都道府県魅力度ランキング2020で絶対王者の茨城県を抜いて見事最下位の座を獲得した栃木県であるが、U字工事の懸命なプロモーションにもかかわらず、その魅力が国民に浸透していない現状を憂い、山間の秘湯や世界遺産が最も輝きを放つ晩秋にGo toトラベルに便乗させていただくツアーを開催することにした。

2020年11月8日(日)
お昼前に自家用車で日野市の自宅を出発し、毎回飽きもせずあきる野インターから圏央道に乗り、東北道の宇都宮インターを経由して日光道に入り、日光インターで一般道に下りるとひたすら山道を霜降高原方面に走っていた。途中のドライブインで山菜の量が少ないのが気になった山菜そばで空腹を満たし、標高1,400m以上の峠を越えて奥鬼怒方面へ向かった。

奥鬼怒温泉への入口となっている日光市営バスの終点である女夫渕(めおとぶち)無料駐車場に着いたのは2時40分くらいで、そこで自家用車を乗り捨てて
ひたすら旅館の送迎バスが到着するのを寒空の下で待っていた。女夫渕より先の奥鬼怒温泉には4つの温泉宿があるのだが、一般車の通行は出来かねるとのことなので奥鬼怒歩道を1時間半かけてトレッキングするかクマに遭遇するリスクを避けるためにバスに揺られるかの選択肢を与えられていたので迷わずバスで行くことにした。

送迎時間の3時を少し過ぎて宿のバスがやってきたので宿泊客は各自出席を取られて乗り込んだのだが、日光市営バスに乗ってくるはずの最後の1組がバスの遅れで未着になっていたのでバスの運転手の決して責めないでやって欲しいとの助言を胸に刻み、コロナ対策用の半開窓から吹きすさぶ寒風に震えながら連帯責任を取っていた。

3時20分を過ぎてようやく出発となり、バスは山道を登って行ったのだが、運転手はとある法面の前でおもむろにバスを止め、斜面にへばりついている特別天然記念物のニホンカモシカの姿を指さした。カモシカフロントの窓に座っている乗客には絶好のシャッターチャンスが与えられたのだが、ブラインドサイドの乗客には千載一遇のチャンスをふいにしなければならない無念のみが刻みこまれたのだ。

劣化してガード不能なガードレール越しに見えるがけ下の景色を堪能すること約30分、ようやく神秘の森に包まれた関東最後の秘湯として名高い日光国立公園・奥鬼怒温泉郷の八丁湯(はっちょうのゆ)に到着した。

到着後、リピーターの宿泊客は速やかに部屋の鍵が渡されたのだが、八丁湯初心者たちは受け付けの脇に集められ、宿主による口八丁手八丁のオリエンテーションの洗礼を受けなければならなかった。ようやく鍵を受け取り、長い渡り廊下に染み付いたワックスの香りを吸い込みながら奥鬼怒の豊かな原生林に囲まれた安らぎのログハウスツインに入室した。部屋の中はWiFiの電波は受信出来るがテレビはなく、高い天井による広々とした空間は独特の音響効果を生み、壁1枚
隔てられた隣室からの隠微な音が一晩中こだまするとはこの時は思ってもみなかったのであった。

宿備え付けの茶菓子で血糖値を調整すると日が沈まないうちに100%自然湧出のかけ流し自家源泉を堪能させていただくことにした。昭和4年開業時の野天風呂
「雪見の湯」をはじめ、「滝見の湯」「石楠花の湯」の3つの混浴風呂でダイナミックな景観を楽しみながらしばしコロナの恐怖から心身を解き放した。

6時20分に食事処に向かうとそこには地の物をふんだんに味わう山の料理が用意されていた。魅力度ランキング最下位とはいえ、栃木の食材を活かした素朴で味わい深い郷土料理は松茸の土瓶蒸しやイノシシ鍋等、人気県でふるまわれる高級料理とそん色のないものであった。

11月9日(月)
北関東系と思われる隣室のヤンキーカップルに安眠を妨害されたものの、温泉効果により肉体には活力がみなぎっていたので朝ぶろの後、うっすらと降り積もった雪をものともせず看板犬の威嚇を軽くいなしていた。

食事処に場所を移すと玉手箱のような風呂敷包みが無造作に置かれているようであったが、結びを振りほどき三段重を展開すると素朴な山菜料理が姿を現すという趣向が凝らされた粋な朝食の演出であったのだ。

下野の国の山間に一足早い冬の訪れを実感した八丁湯を後にすべく送迎バスに乗り込み、道中の工事の影響で30分以上かけて女夫渕に戻ると自家用車で平家落人のひなびた寒村を疾走した。途中で観光百選「瀬戸合峡」という看板が目についたのでその実力の程を確かめてみることにしたのだが、鬼怒川の上流にかかる吊り橋を見て寒気を感じたのでそのまま退散した。

途中美しい紅葉に目を奪われながら峠を上り、下り、日光の市街地に差し掛かると突然車の列がせき止められてしまった。どの車も世界遺産「日光の社寺」方面に向かっているようで観光地の駐車場は平日とは思えないような賑わいであった。

何とか東照宮大駐車場に車をねじ込み、五重塔を一瞥して拝観受付所でセット料金(東照宮拝観券+宝物館入館券)チケット(¥2,100)を購入し、徳川家のお膝元の門をくぐることとなった。

平成31年3月31日まで続いた平成の大修理を経て新装開店なった日光東照宮は1617年に徳川初代将軍徳川家康公を御祭神におまつりした神社であるが、現在のおもな社殿群は、三代将軍家光公によって、1636年に造替されたものである。

国宝、重文がずらりと並ぶ社殿群の中で最初に参拝客をくぎ付けにするものは神厩舎の「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿の彫刻である。この教訓は一説によると農家の長男に嫁入りした娘の姑対策として要所要所で有効性を発揮するものであったろう。

日光東照宮の代名詞となっている日本を代表する美しい門は陽明門で宮中正門の名をいただいたと伝えられており、故事逸話や子供の遊び、聖人賢人など500以上の彫刻がほどこされている。

ボンよ、君たちの仲間が普通にうたた寝をしている姿の彫刻が国宝に指定され、強い者が弱い者を虐げることのない共存共栄の平和な世の中を表現しているという事実を思い知ってくれないか!?

というわけで、伝説的な彫刻職人左甚五郎(ひだりじんごろう)の作品と伝承されている「眠り猫」であるが、その左とやらがなんぼのもんかよくわからない輩にとっては何の変哲もない猫の彫り物にしか見えないはずであろう。

猫を養っている坂下門は江戸時代には正式には将軍社参のときにしか開かれなかったそうであるが、いつからか全開されるようになり、人々は気軽に家康公の御墓所に続く奥参道を闊歩出来るようになったのである。

奥社宝塔(御墓所)は御祭神徳川家康公の墓所で、昭和40年、東照宮350年祭を機に公開されたという。参拝者はホトトギスが鳴くまでじっと待てるような忍耐力を身に着けるべくこの場に佇み、祈りを捧げているのだった。

本殿・石の間・拝殿からなる御本社は東照宮の最も重要なところで、参拝客は靴を脱いでお邪魔することが出来るのだが、写真撮影は禁止となっている。御本社を守る唐門は全体が胡粉(ごふん)で白く塗られ、その表面には非常に細かい彫刻が施されている。

東照宮で一番盛り上がる場所と言えば「鳴き龍」で有名な本地堂(薬師堂)であろう。薬師堂にはヒノキ板が34枚はめ込まれた鏡天井があり、狩野派によって
描かれた巨大な龍の水墨画風の絵を見上げることが出来る。その龍の顔の直下で拍子木をカーンと打つとあら不思議!音が共鳴し、鈴を転がしたような龍の鳴き声が聞こえるというが、本当は誰も龍の鳴き声がどんなものであるかは知らないはずである。

残念ながら「三猿」、「眠り猫」と並び称される日光三彫刻のひとつである「想像の象」は見逃してしまったので後日ガネーシャを見て想像しておくことにした。また、華道家の假屋崎省吾が個展をやっているという立て看板があったのだが、本仮屋ユイカではなかったので興味は引かれなかった。

宝物館の方は御祭神徳川家康公の遺愛品をはじめ、朝廷や将軍家・大名家からの奉納品、当宮の祭器具などを収蔵、展示公開しているのだが、刀剣類や甲冑、大工道具等のガテン系の物が多く、文系の書画や絵巻が少なかったことに合点がいかない輩は少ないと思われた。

夕暮れ近くになると参拝客の数に落ち着きが見え始めたので標高634mの紅葉を思う存分堪能し、持て余し気味の6000円分の地域共通クーポンの使い道を考えながら流れ解散とさせていただいた。

FTBサマリー
総宿泊費 ¥26,455 (二食付き、二人分)
総ガソリン代 ¥4,421
総高速代 ¥8,690

協力: 楽天トラベル、国土交通省観光庁

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