FTBJうる肌温泉で玉を造って神様と縁を結ぼうツアーin山陰

ボンよ、君たちがのんきに不貞寝を決め込んでいる間に島根県まで飛行機を飛ばし、温泉地で肌を磨いて神様とひそかに縁を結ぶツアーが実行されていることはマサに寝耳に水であったろう。

2017年11月24日(土)
前日の金曜日に川崎駅アゼリア地下街に店を構えているチケットショップのJ・マーケットで11月30日期限のANAの株主優待券を1枚あたりわずか¥2,500で入手していた。株主優待割引運賃でお得に購入することが出来たチケットを握って颯爽と10:35発ANA575便羽田発萩・石見行きに乗り込むと約1時間45分のフライトで島根の西端でありほぼ山口県に位置する萩・石見空港にお昼過ぎに到着した。早速空港のTimes Car RENTALでホンダのN-BOXをレンタルすると島根県の東端に位置する松江地方への長旅の火蓋が切って落とされたのだ。道中にて牡蠣入り長崎ちゃんめんを食しながら、ちゃんぽんスープとラーメン麺が見事に縁結びされている実態を目の当たりにしていやがおうにも縁結びツアーの期待が高まっていったのだった。

萩・石見空港から200km近い道のりをN-BOXを転がして何とか玉造温泉に到着したのは午後4時を回った時間であったろうか?昭和天皇も宿泊した実績を売りとする伝統と格式の高いはずの保性館にチェックインするとこの旅館内では何人たりとも性転換が出来ないというプレッシャーを感じながらそそくさと温泉へと足と運んだ。

温泉総選挙2016うる肌部門第1位環境大臣賞を受賞した実績のある玉造温泉はマサに「湯船すべてがまるで化粧水」のような感覚で老化した肌がみるみる若返っていく錯覚に陥っていった。脱衣場にはこれ見よがしにピタッと3秒肌チェック器具がインストールされており、入浴前後の肌の潤いを比較出来る手はずとなっている。気になった点といえば温泉水自体が化粧品と謳っている割にはパウダールームには多数のスキンケアー用品が常備されており、温泉水単体での勝負を決め込んでいる潔さが感じられなかったのだ。また、何故かご丁寧にグルコサミンがおいてあったので最近痛みを感じている左肩にたっぷり塗りこんでグルグル回しながらその効能を見極めていた。

昭和天皇も歩いたはずの中庭で火照った体をさましながら口をあけて集まってくる鯉と縁を結んだ後、待望の夕食時間となった。食卓には豪華な膳が並んでいたのだが、隣の列のテーブルに目をやるとカニの爪のようなものがとがっている感覚を覚えたので極力隣を見ないように山陰の地の食材に舌鼓を打たせていただいたのだった。

腹も落ち着いてきた時間を見計らって寒空の下、温泉地を散策してみることにした。玉袋筋太郎(NHKでは玉ちゃんと改名)が知っているかどうかは定かではないが、玉造温泉の由来は三種の神器の一つ、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)が、櫛明玉命(くしあかる だまのみこと)によってこの地で造られたことだそうで、温泉地を流れる川に架かる橋の上には巨大な勾玉が神秘的な輝きを放っていた。

日帰り入浴施設である玉造温泉ゆうゆにて毎晩20:30より開催されている安来節ショーどじょうすくいを¥500の支払いで見学させていただくことにした。足元が少しふらつき出演者の名前を思い出すのに少し時間がかかるおじさんが見事な安来節を披露した後、銭太鼓という出し物を経ていよいよメインイベントのどじょうすくいが始まった。年の割には安定した柔軟性のある足腰を持つおじいさんのどじょうすくいはプロ野球の内野守備の練習にも取り入れられるべきだと思われるほど見事なものであった。尚、おじいさんの指導の下、観客5人までがステージに上がり、どじょうすくいの芸を授けられることが許されており、参加者は最後にもらう認定証が過酷な指導のすくいとなっていたのだ。

11月25日(日)
バイキング朝食で供されたシジミの味噌汁でしみじみと宍道湖の恵みに感謝した後、島根県内でも有数のスピリチュアルスポットとして名高い近隣の玉作湯神社に祈願に行って見ることにした。

玉作湯神社には触って祈れば願いが叶うと言われている「願い石」がある。ここのシステムはまず社務所で¥500支払って「叶い石」なるものを購入し、その叶い石を御神水で清め、神社に奉納されているまあるい「願い石」に直接触れさせるのだ。さらに拝殿にて「願い札」に願い事、住所・氏名を記入すると宮司さんが御祭神にお取次ぎしてくれることになっている。願いが叶ったあかつきには叶い石を奉納しに玉造温泉を再訪するのでリピーターの確保に一役買っていると言えるのである。

願い石にこの先ボンが気楽に暮らしていけることを祈るとN-BOXを転がしてさらなるパワースポットを目指した。一般的に旧暦10月を「神無月」と申し、これは全国の村々里々にお鎮まりの神々が1年に1度ある場所に参集するためであるのだが、全国に1ヵ所のみその月を「神在月」を申す場所がある。これこそマサにしあわせのご縁を結ぶ大会議の元締めである「大国主大神」さまがお鎮まりになられる出雲大社であられるのだ。尚、平成29年の「神在月」は11月27日夕刻~12月4日夕刻となっており、多くの祭りや神事が予定されている。

あいにく雨のそぼ降る荒天であったが、参道は元若ギャルであるはずの妙齢の女性を中心とした縁結びを求める参拝者で大変な賑わいを見せていた。とりあえず神社フロントで営業しているモダンな店でコーヒーを飲みながらスターバックスの女神が日本の神々と縁結びされている実状を確認し、満を持して鳥居をくぐらせていただくことにした。

境内のあちこちには「ポケモンGO」を禁止する立て札が設けられており、うさぎ以外の動物やモンスターは出入り禁止になっているので参拝者は安心して縁結びの祈願に集中することが出来るのだ。

拝殿で祈願をすませ、その奥の塀で囲まれた御本殿を垣間見たのだが、有料入場制を取られているようなので、どうしても縁を結ばなければならない参拝者を優先させておくべきだと考え、周りをぐるっと一周するにとどめておいた。

参道に立つV字回復杉は縁結びの聖地にありながら別れを意味するのではないかという年長者の噂話が耳に入ってきたので接触することなく神楽殿へ向かった。インスタ映えすること必至である神楽殿の巨大しめ縄は出雲大社のシンボルであり、しめ縄に5円玉を投げつけて見事硬貨が刺さると縁結びの効果が上がると言われているのだが、残念ながら針金の防御が巡らされているため、参拝者の暴挙は制限されることとなったのだ。

縁結びの神様からとてつもないパワーを十分注入してもらった実感を胸に参道の御茶屋で名物出雲そばと出雲ぜんざいが見事に縁結びされているお得なセットでさらなるパワーアップを実感すると後ろ髪を引かれる思いで神話の地に別れを告げた。

萩・石見空港の土産物屋で目にしたどじょう掬いまんじゅうが救いを求めるようなまなざしで見つめてきたのだが、どじょうとは縁結びをすることなく流れ解散となった。

FTBサマリー
総飛行機代 ¥42,380
総宿泊費 ¥42,000(二食付き、二人分)
総レンタカー代 ¥9,820
総ガソリン代 ¥3,450

協力 ANA、楽天トラベル、Times Car RENTAL、Jマーケット

FTBJ道南天国・地獄めぐり

は~るばる来たぜ!はぁこだぁてぇ♪♪

あ~なたと食べたい さぁけちゃづけぇ~♪♪

・・・・中略・・・・

とぉ~てもぐゎまんが~ぁ出来なかぁあたよ~♪♪

というわけで、7月の3連休は家でごろ寝でもしようかと思っていたのだが、出かけたい欲求を抑えるのもどうなん?という思いがよぎったので急遽道南へと繰り出すこととなったのだ。

2017年7月16日(日)
10:20羽田発ANA553便は1人の乗客の手荷物のチェックに手間取り、10分ほど遅れて出発し、雨がそぼ降る函館空港に到着したのは正午前の時間であった。早速オリックスレンタカーで新車の臭いをぷんぷんさせた日産ノートをレンタルすると行き先のメモを取る時間もなく函館市街地へと繰り出した。約20分ほどで函館駅前に到着し、駐車場を探しているとホテルニューオーテという決して大手ではないホテルの駐車場が時間貸しをしていたので、そこに車を預けると豪雨の中、目の前の函館朝市にしけこむことにした。

おばちゃんが差し出すホタテの干物の試食の誘惑を振り切って「函館朝市どんぶり横丁市場」になだれこむと比較的すいてそうな食堂に入り、空腹で♪とぉ~てもぐゎまんが~ぁ出来なかぁあたよ~♪という勢いでおすすめの「朝市丼」を¥2,590もの高値で発注した。これから3時間もの移動が控えているので新鮮美味などんぶりを急いでかっこむとホテルニューオーテに大手を振って¥200の駐車場代を支払い、そそくさと函館を後にした。

函館エリアの人気観光地である大沼公園で道央自動車道に乗り、途中通行止めのため国道の迂回路を経て登別東インターで高速を下りるとソフトバンクホークスの柳田選手でもフルスイング出来ないほど巨大な金棒を携えた赤鬼に歓待されることとなった。ほどなくして温泉街に入ると道路は一本道で分かりやすく、本日の宿泊地であるトーホウリゾートホテルグループが経営する名湯の宿パークホテル雅亭でも笑顔の鬼の親子に迎えられたのだった。何はともあれ温泉を堪能しなければならないので硫黄濃度ランキング第5位(http://trendnews1.com/kateinoigaku/8561/)の高濃度硫黄泉に身を委ねてみることした。源泉は複数あり、単純硫黄泉やナトリウム・カルシウム塩化物泉、湯船の底に地獄からの贈り物であるはずの泥が堆積しやすい濃い硫黄泉をこころゆくまで堪能させていただいた。

夕食はバイキングとなっており、外国人観光客が大挙して押し寄せる時間帯を避けるため、早めの5時半にレストランに入場するとズワイガニを機軸にした北の大地のグルメを胃袋にめいいっぱい詰めこまさせていただいたのだ。

夕食の栄養素が全身に行き渡った時間を見計らって今回の宿泊プランに含まれる日本最大級の大露天風呂を標榜する「まほろば」まで足をのばすことにした。確かに湯船で足を伸ばすことは出来るのだが、日本最大級と名乗るほどのスケール感は他の温泉地の湯宿にまかせるべきであろう。

豊富な湯湧量を誇る登別温泉の源泉は主に地獄谷が供給源となっている。その地獄谷が漆黒の夜を迎えると期間限定のライトアップにより幻想と神秘の谷に変貌するというチラシがここかしこで見られたのでまずは「鬼祠」の赤青鬼に挨拶を交わしてゆるやかな坂道を登ってみることにした。

「鬼火の路」と銘打った路の先には幻想的な地獄谷の爆裂火口跡が口を開けており、遊歩道の終点には「鉄泉池」なる間欠泉が定期的に噴気を上げることも無く85℃のお湯を煮えたぎらせていた。その近くにはライトアップの紫外線につられて飛んできたヤママユガ科に分類されるオオミズアオの水色のシルエットが湯気の間から見え隠れしていたのだ。

7月17日(月)
登別温泉は新千歳空港からのアクセスが非常に便利なこともあり、おびただしい数の韓国人、中国人観光客に支配されている。温泉街の主要ホテルの食事はバイキングが主流で混雑時には仁義無き光景が繰り広げられることが容易に想像できる。地獄谷の背後の山道は遊歩道が設けられているのだが、北海道内でよく見られる「熊出没注意」の看板は見当たらず、このあたりのヒグマはあの有名な「のぼりべつクマ牧場」に収容されたのではないかと訝られた。

定刻10時にホテルをチェックアウトすると、地獄谷から流れる温泉の川沿いから噴出す間欠泉を利用した公園である「泉源公園」で噴気を浴びて身を清め、あらためて日中の地獄谷の風景を見に行くことにした。展望台から見下ろすといたってスタンダードな地獄の風景が広がっているものの、ここから多種類の温泉が毎分約3,000リットルも湧き出していることを考えると本当は地獄の皮を被った天国ではないかと思われた。

少し時間があったので登別温泉散策MAPで紹介されている「奥の湯」、「大湯沼」まで足を延ばしてみることにした。いずれも高温の硫黄泉をぐつぐつと煮えたぎらせている水場であるのだが、不思議なことに温泉卵や黒卵の生産地としては活用されていなかったのだ。

登別温泉を下り、「鉄のまち」「ものづくりのまち」で有名な室蘭市街地を抜けて地球岬へ向かった。随分大きく出た名称だなと思うかも知れないが、語源の「ポロ・チケップ」(親である断崖)が、チケウエ→チキウと転訛し、「地球岬」という当て字が使われたということなので決して地球を征服してやろうという野望を微塵も感じてはいけないのだ。

今日は海の日で灯台が開放されるということで駐車場までの道のりが大渋滞を起こし、車を停めるまでに30分以上の時間を要してしまったのだ、高台から見下ろす灯台と青い海のコントラスト、険しい断崖と地球の丸さを実感させる水平線はマサに「地球」そのものだと言えよう。

室蘭から撤収し、稀代の名横綱北の湖敏満を輩出した有珠郡方面へ車を走らせた。「日本ジオパーク」「世界ジオパーク」に認定されている活火山である有珠山の麓は自然と一体となったテーマパークの様相を呈しており、昭和の明峰「昭和新山」もその新鮮さを誇示するかのように山肌をさらしている。

かの有名な「のぼりべつクマ牧場」の入場料が¥2,592に対して「昭和新山熊牧場」はわずか¥850の支払いで入ることが出来るので躊躇せずに入場してみることにした。北の湖や白鳳であっても寄り切ることが出来ないはずのヒグマたちは年代別、性別毎に収容されており、年端も行かない小熊は比較的広いスペースで走り回ることが出来るのだが、小学生くらいのやんちゃ坊主は檻の中から娑婆の方を恨めしそうに見つめていた。

ここでのアクティビティは2袋¥200で販売されているクッキーを熊に向かって投げつけることなのだが、手馴れた熊は袋を持っている観光客に向かって手を振ったり、銅メダルを獲得した卓球の水谷選手のように後ろ向きに倒れこむようなパフォーマンスをかまして関心を引き付け、¥1でも多くクッキーの売り上げを上げようと躍起になっていたのだった。

熊とのふれあいを充分に堪能することが出来たので、2007年7月にサミットが開催された洞爺湖を抜け、高速道路に乗って函館方面に帰っていった。北海道新幹線と熾烈な乗客獲得競争を繰り広げている割には設備が充実していない函館空港は特に永谷園系列の定食屋の出店もなかったのでシャケ茶漬けを食うこともなく、19:35発ANA558便に搭乗し、次回は真っ先に「北島三郎記念館」http://www.kitajima-museum.jp/に駆けつけ、♪与作♪を熱唱した後に観光をかますべきだろうと考えながら流れ解散となった。

FTBサマリー
総飛行機代 ¥44,580
総宿泊費 ¥30,400(二食付き、二人分)
総レンタカー代 ¥11,460
総高速代 ¥5,640
総ガソリン代 ¥3,514
総駐車場代 ¥1,200

協力 ANA、楽天トラベル、オリックスレンタカー

東北でよかった!遅れてきた花見ツアー

今年の春は周辺で起こった様々な私事で3月末~4月は花見どころではなかったのだが、GWも終盤となるころ落ち着きを取り戻すことが出来たので何とか花見の挽回が出来ないかと考えていた。巷では「東北でよかった」という言葉が花盛りになる一方で大臣は散っていったのだが、東北北部の山間部で桜前線のアンカーを飾っている場所があるということなので万障繰り合わせの上、訪問を試みることにしたのだ。

2017年5月5日(金)
GWもたけなわの日程で飛行機や新幹線の切符を取るのは至難の業であったのだが、成田発仙台行という国際線接続のおまけの便に空席がたくさん残っていた。車で京成成田駅まで移動して、1日あたり\700というお得な駐車場に車を捨て置き、京成特急で成田空港に乗り込んだ。午前10時発ANA3231便は定刻通りに出発すると1時間程度のフライトで津波の被害を永遠に忘れることのない仙台空港に到着した。

早速タイムズレンタカーで日産リーフをレンタルすると矢沢永吉に「やっちゃえ♪」と背中を押されるような勢いで高速道路のETCゲートをくぐって行った。宮城から岩手の県境を超える前に昼飯時になったので長者原SAに立ち寄り、わらしべの代わりに名物牛タン定食(\980)を召し上がったのだが、牛タン2切れのみでは到底満足感を得るには至らなかった。

気を取り直してリーフに戻って再び東北の風に吹かれるように北上し、盛岡インターで東北自動車道を降りて細い山間迷い道をくねくねと進んでいった。ひとつ曲がり角、ひとつ間違えると渡辺真知子よろしくブルーになってしまうところであったが、順調に小岩井農場に到着することに成功した。

実際去年の4月下旬の花見の時期にこの地を訪れていたのだが(http://www.geocities.jp/takeofukuda/2016michinoku.html)、名物の一本桜はつぼみのままであった。開花時期はGWの終盤ということなので満を持して再度一本桜と対面させていただいたのだが、東北のV字回復を暗示するかのような空模様の下で一人咲きのエドヒガンザクラは凛とした雰囲気を湛えていたのだった。

名物生乳ソフトを賞味する間もなく小岩井農場を後にすると再び東北道に戻り、左手に見える岩手山に追いかけられながら松尾八幡平インターで高速を降りた。春まだ浅い八幡平の山間部を縫うように走るアスピーテラインは迫りくる雪の壁が名物なのだが、車を止めてゆっくり写真を撮る余裕がなかったので一気に目的地へと疾走した。

八幡平頂上付近で岩手から秋田へと道は変わり、通常であれば定宿の後生掛温泉に投宿するところであったのだが、予約出来なかったのでさらに秘湯度の高い「ふけの湯」を目指してがたがた道を進んでいった。冬季通行止めになるアスピーテラインの歳時記を踏襲するように4月の下旬から営業を始めるふけの湯は豪雪の中から掘り出された様相を呈しており、帳場の近くにあるふけの湯神社では子宝を願ういちもつ系の金勢大明神が虚勢を張っていた。

チェックイン時に名物野天風呂の説明を受けているときに宿主より熊を見かけたので注意するようにと言われたのだが、入浴時の丸腰の状態で熊と勝負せざるを得ない状況に追い込まれた時にはやはり自身の金勢大明神しか頼りになるものがないと覚悟させられた。

何はともあれ、願い牛に熊との鉢合わせを避けるように願掛けし、見るからに賽の河原の様相を呈している野天風呂へ続くゆるやかな坂道を下りて行った。野趣溢れる野天風呂は男女それぞれの浴場と掘立小屋系の更衣室が心細い混浴があるのだが、女性はバスタオルを巻いて入浴することが許されているので、混浴の方が人気のある様子であった。

ふけの湯の湯守がぬるめに設定した源泉かけ流しの単純硫黄泉は長時間の入浴を可能にし、頭をぽりぽり掻いた時に肩口に落ちる白い粉のようなものが水面に浮かんでいるのを目の当たりにするかも知れないが、それは湯ノ花のはずなので安心して火山の恵みに身を委ねることが出来るのだ。

今では廃墟となっているオンドル小屋を横目に野天風呂を後にすると夕飯時になったので素朴だが品数の多い膳が鎮座しているテーブルに着かせていただいた。地の物の焼きリンゴや山菜は明らかに熊との競合に打ち勝って収穫した貴重なものであり、食べ物が取れなかったはずの熊は今では電話番として第二の人生を送っているかのようであったのだ。

5月6日(土)
5月とはいえ、標高1100mに位置するふけの湯の朝は寒かったので早朝より野天風呂の男湯で暖を取らせていただいた。朝食後にはあいにくの雨模様となったため、館内の屋根付き露天風呂で300年前から湧き出る八幡平最古の秘湯の余韻に浸っていた。

心理的な頭のかゆみを伴いながらふけの湯を後にすると霧に包まれ、視界不良となったアスピーテラインをゆっくりと下って行った。

八幡平の玄関口に「あすぴーて」という地元の野菜、工芸品を販売する施設があり、その隣の公園に植えられているソメイヨシノがマサに満開を迎えていた。残念ながら雲に遮られて岩手山とのコラボレーションは見ることが出来なかったのだが、遅れてきた花見を満喫するには余りある桜並木のすばらしさであった。

日本名水百選「金沢清水湧水群」のありがたい水からサイフォンで抽出した八幡平コーヒーで体温を上げると日本で一番遅いはずの桜祭りの会場へと車を走らせた。八幡平さくらまつりは5月6日(土)、7日(日)に岩手県県民の森でひっそりと開催されていたのだが、雨のために心なしか盛り上がりを欠いているようであった。しかしながら、会場の周囲に咲き誇るピンクの山桜は岩手県人の誇る宮沢賢治の名作よろしく「アメニモマケズ」イーハトーブを見事に彩っていたのだった。

FTBサマリー
総飛行機代 \23,430
総宿泊費 \28,080(二食付き、二人分)
総レンタカー代 \10.650
総高速代 \11,610
総ガソリン代 \4,936
総駐車場代 \1,400
総鉄道代 \516

協力 ANA、楽天トラベル、タイムズレンタカー

蔵王の帝王スノーモンスター「樹氷」遭遇ツアー with温泉

シベリアからの北西の季節風は、日本海の対馬暖流(夏は25℃くらい、冬でも10℃前後)から多くの水蒸気をもらって雪雲をつくる。雪雲は朝日連峰で上昇して多量の雪を降らせ、雪雲は山形盆地を通って、再び蔵王連峰で上昇して雪を降らせる。そのときの雲のなかは、多くの雲粒が0℃以下でも凍らない過冷却水滴になって、雪とまじりあった状態になっている。蔵王の1~2月頃は快晴の日が少なく、風向きは北西から西を示し、平均風速10~15m/s、平均気温マイナス10~マイナス15℃の吹雪の世界となる。樹氷はこうした気象条件のなかで成長し、スノーモンスターへと変貌を遂げ、世界中の観光客を凍てつく山頂へといざなっているのだ。

2017年2月18日(土)
午前10時発ANA3231便は定刻通りに成田空港国内線ターミナルから出発し、1時間弱のフライトで仙台空港に到着した。空港で名物炭火焼牛タン網焼き定食を食った後、仙台バスが運行する山形蔵王号に乗り込み、車内の「除菌バス」の看板の下、インフルエンザ罹患の恐怖を感じることなく、午後1時半前に蔵王温泉バスターミナルに到着した。

日本を代表するスキー場を要する蔵王温泉はハイシーズンを迎え、宿の予約が取りづらい状況ではあったが、楽天トラベルの検索でかろうじてひっかかった蔵王石清水料理の宿「季の里」にチェックインすると来るべき極寒ツアーに備え、日本で2番目の強酸性泉に浸かり、体の表面の異物を削ぎ落とし、おしるこで暖を取らせていただいた。

冬場の限られた期間にのみ開催される樹氷ライトアップを見物する観光客のために夕食は午後5時半からスタートとなった。さすがに料理の宿を標榜するだけあり、「粉雪降る蔵王温泉霜降蔵王牛しゃぶしゃぶ会席膳」は、完食するとしゃぶ中になってしまうのではないかと懸念されるほど美味なものであった。

宿の受付で100円引きの樹氷ライトアップ鑑賞チケット(ロープウエイ往復込みで¥2,500)を購入し、部屋付けにしてもらうとホテルのバンでロープウエイ乗り場まで送っていただいた。標高855mの蔵王山麓駅から京浜東北線の通勤電車のような満員ロープウエイに乗り込むとナイタースキーを横目に徐々に高度を上げ、約7分で標高1,331mの樹氷高原駅に到着した。さらに「恋人の聖地サテライト」にこじつけ選定されている小型のロープウエイに乗り換えると漆黒とスノーホワイトが入り混じった静寂の世界の中をさらに高みを目指すように進んでいった。

標高1,861mの地蔵山頂駅に到着した頃には肉体はすっかり凍てついていたのだが、気力を振り絞り、吹雪の屋上展望台に出て見ることにした。カクテル光線に照らされたスノーモンスターは人類の接近を阻むかのように立ちふさがっていたのだが、あまりの寒さのため、5分あまりで展望台からの撤収を余儀なくされたのだった。尚、これみよがしに掲げられている温度計は容赦なく-12.5℃を指し、観光客の気持ちを萎えさせるのに一役かっていたのだった。

幸いにも山頂駅にはレストランが開業しており、ものすごい勢いで熱風を供給するエアコン装置の前で観光客は凍った体の解凍とカメラのバッテリーの復旧に勤しんでいた。また、レストランの凍結防止ガラスの向こうにはライトアップされた樹氷原が広がっており、寒さに耐え切れない観光客は暖かい飲食物を肴に窓越しの樹氷見物を満喫することも出来るのだ。

体もそこそこ回復した頃を見計らって、窓越しに見た樹氷を間近に見るべく、意を決して外に出ることにした。

スノーモンスターはマサに手の届くほどの距離にあるのだが、その造形美はあまりにも神々しく、通常であれば寒さを忘れて見入ってしまうところであろうが、1時間も外にいると自分がスノーモンスターへと変貌を遂げる状況になることは避けられないので早々と退散し、暖かい温泉が沸く下界へと潔く下って行ったのだった。

2月19日(日)
強酸泉の蒸気による館内の金属の劣化を恐れて離れに建てられている源泉かけ流しの温泉への往復を何回か繰り返し、会席系の朝食に舌鼓を打った後、荻原健司が金メダルを与えた「季の里」をチェックアウトして再び銀世界へと挑戦することにした。

午前中のロープウエイ乗り場は整理券を手にしたスキー・スノボ客と一般観光客で長蛇の列が出来ており、ロープウエイに乗り込むまでに30分程の時間を要してしまった。雪と雲で視界が悪い中、窓越しに霧氷ははっきり見えたものの、第8回レコード大賞を受賞した橋幸夫の名曲♪霧氷♪は歌詞とメロディーが浮かんで来なかったので熱唱することはかなわなかったのだが、かろうじて首だけはかしげておいた。

昼間の山頂駅はライトアップ時より気温が上がっていることを期待していたのだが、温度計はむなしく-10.9℃を指しており、しかも強風ホワイトアウトで視界がさえぎられているため、展望台は封鎖となっていた。

やむなくレストラン内部で白い世界を堪能しようとしたのだが、昼食時間に差し掛かったレストランは食物で内部体温を上げようとしている観光客に占拠されており、やむなく短時間での下山となってしまった。尚、快晴時のスノーモンスターの光景は筆舌に尽くしがたいほど美しいのは必至で、その絶景を求めてリベンジ観光に来なければならないという決意を秘めて蔵王温泉を後にした。

帰路は蔵王温泉からバスで山形駅まで移動し、羽の生えていない新幹線つばさ号で東京へと向かったのだが、皮肉にも新幹線の車窓から見る蔵王山系は見事に晴れ渡っていたのだった。

FTBサマリー
総飛行機代 ¥10,590
総新幹線代 ¥1,340
総宿泊費 ¥36,720(二食付き、二人分)
総バス代 ¥2,600

協力 ANA、JR東日本、楽天トラベル、蔵王石清水料理の宿「季の里」