日本で有数のメジャーリーグベースボールの評論家として名高い私の元にベースボールマガジン社やプロ野球ニュースから毎日のようにヘッドハンティングの電話がかかってきているのは皆様もご存知の事だと思います。このような状況を鑑みて、この度GWの連休を利用してFTB主催のMLBツアーを敢行することにいたしました。尚、類似のツアーがJTBほか大手旅行代理店から発売されておりますが、FTBのツアーとは一切無関係です。
4月28日(土)
GWの初日ということで成田空港第二ターミナルは大変な賑わいを見せていた。何とかチェックイン、出国を済ませた後、ANA012便、B777機に乗り込み、イチロ、シカゴを目指した。気が付けばシカゴオヘア空港に登場するのは今年早くも4回目を数えるベテランになってしまっていた。
早朝の8時半頃シカゴに到着し、早速空港でレンタカーを借りてハイウエイを北上し、ウィンスコンシン州のミルウォーキーに向かった。1年半ぶりに訪れたミルウォーキーで窓を全開にして運転しているとどこからともなくホップの香りが漂ってくる。そう、ここはアメリカの3大ビールメーカーの1つであるミラーの城下町である。
マサよ、君は1日に3人の日本人大リーガーを見たことがあるか?
ということで第3次MLBツアーの第一弾はここミルウォーキーから始まった。ミルウォーキー・ブリュワーズの本拠地は昨年まで歴史と伝統のあるカウンティスタジアムであったが、老朽化のため、今年から、天然芝、開閉式ドーム球場であるミラーパークをオープンさせた。一昨年あの野茂も在籍していたミルウォーキーはモントリオール・エキスポズを迎え1時5分にプレーボールとなった。試合はミルウォーキーの3番ジェフ・ジェンキンズの3打席連続ホームランなどで大量リードを奪い4万あまりの観客を興奮のルツボに陥れていた。敗色濃厚のモントリオールは7回から吉井を投入した。吉井は味方のまずい守備で招いた1死満塁のピンチで4打席目のジェンキンズを迎え、この時球場はこの日一番の盛り上がりを見せていた。しかし、吉井も浪速のど根性で投げた渾身のフォークボールでジェンキンズを三振に打ち取り、続く4番のリッチ-・セクソンも凡打に打ち取り何とかピンチを0点で切り抜けることが出来た。
吉井の活躍を確認して、ミラーパークを後にし、イチロ、シカゴへの帰路を急いだ。シカゴ・ホワイトソックス対シアトル・マリナーズの第2戦は午後6時5分からコミスキーパークでプレーボールの予定なので急がなければならなかった。
シカゴホワイトソックスの本拠地コミスキーパークに到着したのは試合開始前30分くらいだった。早速ボールパークパーキングに車を止めてチケットカウンターへ向かった。前売り券を買ってなかったのでコミスキーパークのチケット売り場のおね~ちゃんに混ミスギ~!と言われて入場を拒否されたらシカゴくんだりまで来た意味が無くなってしまうと心配していたが、何とかライト側のボックスシートを入手することが出来た。
球場内のライトスタンド近辺はジャパンタウンと化し、シカゴ中のすべての日本人がイチローの登場を今か今かと待ち構えていた。振り子打法を卒業し、大リーグ仕様の打法に切り替えたイチローの登場で幕を開けた試合であったが、開始直後、ミズノプロ、イチローモデルの黒バットが一閃すると打球は鋭くセンター前に抜けていき場内は歓声とブーイングの嵐に包まれていた。
マサよ、君はシアトル・マリナーズの勝利の方程式を生で見たことがあるか?
私は・・・・・見た!!!
というわけでその日のイチローは芸術的なバットコントロールで6打数3安打の好成績を残し、守ってはグラブ作りの天才、坪田名人特製のグラブを華麗にさばき、またレーザービームアームと称されるその強肩を存分に披露し、シカゴ市民の度肝を抜いていた。試合は8対5でシアトルが3点リードした9回裏大魔神がシカゴの攻撃を3人で退け、今期早くも13セーブ目をあげたのであった。
4月29日(日)
この日、日曜日はデーゲームであった。昨日のナイターの熱戦にもかかわらずイチローはマリナーズ選手の中で一番早くグランドに姿を現し、入念にウォーミングアップを行っていた。試合は結局延長14回を戦い、シアトルはサヨナラ負けを喫してしまった。今日のイチローは6打数1安打2三振と当たってなかったものの盗塁を1つ決め、相手バッテリーを恐怖のどん底に突き落としていた。
結局まる2試合イチローの一挙手一投足を観察することが出来たわけであるが、まず感じたことは、イチローはすでにメジャーで10年くらい飯を食っているような雰囲気と実力を兼ね備え、味方からは尊敬され、相手からは恐れられている存在であるということだ。しかし、今後数多くの刺客がイチローを倒そうと牙を研いでいるのでまだまだ予断を許さない状況であることは確かである。
4月30日(月)
4月も今日で終わりということで一足先に夏のリゾート気分を満喫するために、シカゴからマイアミまで足を伸ばすことにした。寒さの残るシカゴから2時間55分のフライトで蒸し暑いマイアミ国際空港に到着したのは12時を回ったころだった。早速レンタカーをピックアップして向かった先はマイアミから160km先のアメリカ合衆国最南端のキーウエストというところである。キーウエストは東西約5.5km、南北約2.5kmという小さい島でマイアミよりもキューバの首都ハバナに近いという地理的条件を持っている。
ここで必ず訪ずれなければならないのはなんと言ってもサザンモストポイントである。ここにはキューバまで90マイル、米国最南端の地と書かれたオブジェがあり、観光客にとって絶好の記念写真ポイントである。ところでキーウエストと言えば、文豪アーネスト・ヘミングウエイが1931年から8年間過ごした地として有名である。へミングウエイに言わせるとここには老人と海だけしかないということになってしまうが実際にはバケーションを楽しんでいる若者で大変な賑わいを見せている町である。ヘミングウエイが住んでいた家が博物館として保存されているので見に行こうと思っていたが、5時で閉館だったため、中に入ることが出来なかった。私も将来「老人とマサ」を執筆して芥川賞を狙うためのノウハウをぜひとも身に付けたいと思っていたので大変無念であった。
夕暮時に釣場でのんきに釣糸をたらしている若者がいた。彼の表情には今日の釣果が芳しくなく焦燥の色が浮かんでいた。しかし、私が来てほどなくすると彼のロッドがいきなり大きくしなり始めた。これは大物だ!!と誰しもが期待の表情を浮かべた。リールを巻いては引き、巻いては引きの激闘を繰り返した結果、若者が吊り上げたものは体調30cmはあろうかと思われる巨大な?シュモクザメであり、観客もいっせいに興ザメしてしまった。心の優しい若者はシュモクザメが食いついて離さない釣り針をペンチを使って強引に取り去り、記念撮影に応じた後、血だらけになったあわれなシュモクザメをエメラルドグリーンの海にリリースしやがった。
5月1日(火)
マイアミからキーウエストの道のりには点在する島を結んだChannelというたくさんの橋がかかっている。中でも一番有名な橋はあたかも海の上に浮かんでいるような錯覚を覚えるセブンマイルズブリッジという約7マイルにも渡る長い橋である。もちろんこの橋の両サイドはサンゴ礁輝くエメラルドグリーンの海である。
さて、キーウエストでリゾート気分を十分満喫し、脳みそも溶けそうな状態になっていたので気を取り直してフロリダ半島最南端にある国立公園であるエバーグレースナショナルパークへ向かった。高温多湿のフロリダ半島南部には広大な湿地帯が広がっており、多くの熱帯植物や野生動物の宝庫となっている。公園のシャークバレーのビジターセンター($8.)に入場し、早速園内の探検に向かうことにした。この場所のアトラクションはトラムツアー($10.)かレンタルバイク($4.75/hr)で湿原内のはるかかなたの展望台がある場所まで進むことが出来ることである。
エバーグレースはアリゲーターやクロコダイル、スッポン等の亀類や各種鳥類の宝庫として有名であるが、ここシャークバレーの川沿いの道筋を進めば野生のアリゲーター等の姿を間近で見ることが出来るのだ。私も早速レンタルバイクを借りようと思い、バイク屋のカウンターに向かった。そこにいたワニを寝技に持ち込んでもフォール勝ちしそうな頑強なおね~ちゃんがレンタルする際に次のような注意事項を教えてくれました。ここのバイクはハンドルにブレーキが付いてなく、ペダルを後ろに回すとブレーキがかかるようになっている。また、ワーニングと書かれた自己責任の覚書のような書類にサインまでさせられ、バイクで転んで怪我をしてもワニに食われても責任を取ってやれないので心して行動するようにと言われた。ちなみに、今まで川に落ちてスッポンに服を剥ぎ取られてスッポンポンになった観光客がいたのかどうかは定かではなかった。
ジャニーズ事務所所属のV6のヒット曲「ワニなって踊ろう」を歌いながら、早速バイクに跨り、湿地帯に向かった。数メートルほど進むとそこらじゅうでアリゲーターが昼寝をしており、マサにハンドバッグメーカーの材料のバイヤーにとってよだれの出そうな状況であった。トラムおよびバイクのトレイルは異常に長く、中野浩一と同等の脚力を持つ私であっても最深部の展望台まで到達するのに1時間を要してしまった。展望台から見渡すと眼下にはアリゲーターと亀の住む沼、遠くには広大な湿地帯が大きく広がっていた。
展望台の近くの乾いた場所で巨大なスッポンを発見した。私も疲労がたまっていたので思わずスッポンの首にストローを突き刺して生血でもすすってやろうかと考えたが、このスッポンは産卵のための穴掘りで忙しく、かまってもらえなかったので見逃してやることにした。
フロリダ・マーリンズという新鋭の球団がマイアミ北部に本拠地を構えているのでプロプレイヤースタジアムまで見物に行ってきた。今日の相手は強豪セントルイス・カーディナルスであったが、主砲マーク・マグワイヤを右ひざの故障で欠くカーディナルスの打線は迫力に欠けるものがあった。このスタジアムはNFLのマイアミ・ドルフィンズとの共同使用になっており、45,000人ほどの収容人員を誇るが、リゾート地まで来てスポーツを見に来る輩は非常に少なく、今日の観客は千葉ロッテマリーンズと同等レベルであった。しかし、ラテン系の血を引き継いだ観客の熱狂ぶりはすさまじく試合に勝ったマーリンズに歓喜の声援を送っていた。
ところでマサよ、アリゲーターを見て思い出したのだが、以前ワニブックスからFTB写真集を自費出版するために君の以前の職場であった500円玉製作所から500円玉の横領を頼んでおいたが、未だに「お~了解した!!」という返事をもらってなく、うやむやになってしまっているのはどういうことだ!!
5月2日(水)
朝6時半のUA便でマイアミからアトランタまではるばるやって来た。ここアトランタはジョージア州の州都というよりはアメリカ南部の首都といえるほど巨大な都市である。そろそろスターバックスを飲み飽きた頃でもあり、本場ジョージア州で「明日があるさ♪♪」を歌いながらジョージアコーヒーを飲んでほっ!としたいと考えていたのだが、そんなものは売っているはずもありゃしなかった。
空港からレンタカーで市内のハイウエイに繰り出すと車線が7車線もあり、しかも7車線とも混んでいるという恐ろしい状況を見てしまった。ともかくこの渋滞を抜けてI-75を北上し、イチロ、シンシナチへの道を急いだ。テネシー州とカーネルサンダースの故郷であるケンタッキー州を抜け、8時間程度走るとシンシナチに到着した。シンシナチ・レッズの本拠地シナジーフィールドはオハイオ川の川辺に位置しており、川を越えると隣はすぐケンタッキー州である。シンシナチ・レッズにはケン・グリフィーJr.というスーパースターがいるが、残念ながら彼は現在故障中で試合に出ることは出来ない。対ロサンゼルス・ドジャーズとの試合は7時5分にプレーボールとなった。今日の見所はMLBでもトップ5に入る投手であるLAのケヴィン・ブラウンのピッチングである。彼は最速99マイルのファストボールと96マイルの微妙に変化するムービングファストボールを巧みに操り、レッズの打線を封じ込め、LAに勝利をもたらせた。
5月3日(木)
今回のMLBツアーでは残念ながら、マーク・マグワイヤ、ケン・グリフィーJr.といったスーパースターを見ることが出来なったが、MLB最強のスーパースターであるバリー・ボンズがピッツバーグにやって来るということでさらに5時間北東に移動して見に行ってきた。ペンシルバニア州に入り、What a feeling ?の感覚が強くなり始めたころ、「フラッシュダンス」を生み出したピッツバーグの地に入ったことを実感させられた。
ピッツバーグ・パイレーツの本拠地PNCパークは今年オープンした新球場であり、外野側に高層ビルの景観を取り入れた都市型スタジアムである。ここはパイレーツの本拠地であるため、ナイスバディの球審も前かがみでひざに手をおいたポーズでストライク・ボールの判定を行っており、心なしか球審のコールも「ストライクだっちゅ~の!」、「ボールだっちゅ~の!」と響いていたような気がした。
今日パイレーツと対戦するサンフランシスコ・ジャイアンツにバリー・ボンズという最強のスーパースターがいる。彼は先日500号本塁打を放ち、盗塁もあと20数個で500盗塁を数えるほどの走攻守にバランスの取れたプレイヤーである。ボンズは1回の表に回ってきた1打席目にいきなりライト場外に13号本塁打を放ち、1個$9のボールを川に沈めてしまった。彼はその後、2打席目、4打席目もヒットを放ち、そのスーパースターぶりを如何なく発揮していた。
さて、試合の方は9回の表に最大の盛り上がりを見せていた。ジャイアンツの攻撃は2アウトながらランナー1,2塁でバリー・ボンズを迎え、1打逆転のチャンスであった。ところで、ふとブルペンに目をやるとジャイアンツの投球練習場で背番号31番、長身から独特の2段モーションで投げ下ろす大男が投球練習を始めていた。「あれはジャイアンツの守護神ロブ・ネンだ!!」ロブ・ネンは現在のMLBで102マイルという最高速の速球を投げる絶対的な抑えの切り札である。結局ボンズは四球を選び、打順は昨年のナショナルリーグMVP男、4番のジェフ・ケントに回った。ロブ・ネンの投球練習にさらに力が込もったころ無常にもケントのバットが空を切り試合終了となった。
この光景を目にしたロブ・ネンは「満塁のチャンスに4番やのになんで三振すんネン!、わいのいままでの投球練習は何だったちゅうネン!!」とでも言いたげな無ネンの表情を浮かべて勝利のハイタッチを繰り返すパイレーツナインを横目にグランドを去って行った。
5月4日(金)
早朝5時に常宿のMotel6を抜け出し、イチロ、アトランタへの帰路を急いだ。FTB伝統のペンシルバニア、ウエストバージニア、バージニア、ノースキャロライナ、サウスキャロライナ、ジョージアの5州ぶっちぎりで走法でアトランタにわずか12時間で帰ってくることが出来た。
1996年に開かれた夏季オリンピックを記念して聖火台を奉ってあるFulton Countyの近くにターナーフィールドがある。ここは当時のオリンピックのメイン会場であり、その後改装されて現在はアトランタ・ブレ-ブスの本拠地球場に生まれ変わっている。
マサよ、君はトマホークチョップをやったことがあるか??
アトランタ・ブレ-ブスの象徴はトマホークという石斧であり、ブレ-ブスがチャンスを迎えるとトマホークチョップと言ってスポンジ製のトマホークを上下に振らなければならない。しかもこれをやらないとアトランタで市民権を得られないほど重要な作業であるので私も早速トマホークを購入($6.-)した。セントルイス・カーディナルスと対戦したブレ-ブスは打線に当たりがなく苦戦を強いられていた。結局この日トマホークチョップが炸裂したのはたった3度だけで、試合の方も残念ながらブレ-ブスが惜敗してしまった。
トピックス
*ウイルソングローブデイ
運道具メーカーのウイルソンが主催するウイルソングローブデイがミルウォーキーのミラーパークとシカゴのコミスキーパークで行われていた。これは少年少女の入場者にグローブをただで配るというたいへんお得なイベントである。高年のためグローブを受取る資格のないマサであれば純粋な野球少年を脅してでも手に入れていたであろうと思われた。
*最新レンタカー情報
今回3つの空港でレンタカーを借りた。ハーツゴールドクラブという高級会員の私に対して、2つの空港で新車を貸し与えられたわけだが、その新車のカーステはカセットがなく、MD/CDのデジタル仕様であったため、日本から持参したELTが聞けないという屈辱を味わってしまった。従って、今後ミュージックソフトを持参するときはアナログとデジタル両方を準備しなければならない。
FTBサマリー
総飛行機代 \260,180(そのうち\90,000分はANA御利用券を使用)
総宿泊費 $342.28
総レンタカー代 $525.30
総ガソリン代 $129.80
総走行距離 2,437マイル
総スピード違反反則金 $0.00
今回訪問した州 イリノイ、ウィスコンシン、フロリダ、ジョージア、テネシー、ケンタッキー、オハイオ、ペンシルバニア、
ウエストバージニア、バージニア、ノースキャロライナ、サウスキャロライナ(以上12州)
今後のFTBの予定は夏休み特別企画!MLBツアー完結編「4ヵ月後のイチローの成長の軌跡を追え!、新庄はまだ生き残っているか!?」をお送りするかも知れません。